アンデス文明史上最大の領土をもっていたインカ帝国。彼等は車輪も鉄器も知らなかったといいますが、多数の巨大建築物を擁する大文明を短期間で築きました。
1533年のスペイン人征服者が「最後の皇帝」アタワルパを処刑して国家としてのインカは滅亡しましたが、本展では植民地期のインカのイメージまでを考察していきます。
会場会場は「インカ:帝国の始まりとその本質」「インカ:帝国の統治」「滅びるインカ、よみがえるインカ」「マチュピチュへの旅」の4部。各所に映像の解説も設けられ、理解しやすい構成です。
会場展示の見せ場は、インカに滅ぼされたチャチャポヤ人の5体のミイラ。盗掘前で布に包まれたままのミイラ、身分の高い人物だったことが予想される成人男性、眼球が残っている少女…。頭髪を切り、皮膚をなめすように磨き、折りたたむような形で綿布にくるんで埋葬する習慣は、インカ族が伝えたと考えられています。
5体のミイラ会場の最後にあるのが、530インチの3Dスカイビューシアター。実写映像とVR(バーチャル・リアリティ)を組み合わせて、通常では体験できない視点から500年前のインカ帝国時代のマチュピチュが再現されます。映像は3Dなので残念ながら会場写真は撮影できませんでしたが、ぜひ最前列での鑑賞をお勧めいたします。
会場国立科学博物館での開催は6月24日(日)まで。その後に
仙台市博物館、
山梨県立考古博物館、
静岡県立美術館に巡回されます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2012年3月9日 ]