2015年5月に終了した「ベスト・オブ・ザ・ベスト」展の後、長期休館となっていた旧ブリヂストン美術館。ビルは立て替えられ、以前と同じ場所に23階建て高層ビル「ミュージアムタワー京橋」が新築されました。アーティゾン美術館は、その低層部(展示室は4~6階)に入っています。
新しい館名のアーティゾン「ARTIZON」は、「ART」(アート)と「HORIZON」(ホライゾン:地平)を組み合わせた造語。アートによる限りない地平を多くの方に感じてもらいたい、という意志が込められています。
美術館としては珍しく、日時指定予約制を導入。来館前に「ウェブ予約チケット」を購入し、指定した時間枠(1日4枠、金曜のみ5枠)に入館する事で、入館までの待ち時間や館内の混雑を緩和しようという試みです。
なお、場合によっては「買った時間に間に合わない!」という事もありそうですが、1回に限り、日時指定の変更も可能です。
チケットはQRコードで、3階のセキュリティゲートにかざして入館。今回の展覧会は、エレベータで上がって6階からスタート。エスカレーターで順に下がっていく導線です。再入場はできませんが、6~4階の展示室の往来は自由です。
開館記念の本展は、展示面積が約2倍になった美術館の全展示室を使い、206点を展示します。アーティゾン美術館は休館期間中も作品の収集活動を続けており、本展で初公開となる新収蔵作品31点も見どころとなります。
展覧会は2部構成で、6階が第1部「アートをひろげる」。1870年代のマネから2000年代のスーラージュまで、約140年間の作品を一つの地平に並べる事で、美術の風景を一望します。
旧美術館の顔だった、ピエール=オーギュスト・ルノワール《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》、エドゥアール・マネ《自画像》のほか、新収蔵作品のメアリー・カサット《日光浴(浴後)》などが目をひきます。
今回は絵画が多いので壁が立てられていますが、6階の展示室は柱が無い大空間です。現代美術の大型作品にも対応可能で、今後はさまざまな企画が行われそうです。
5階~4階は、第2部「アートをさぐる」。装飾・古典・原始・異界・聖俗・記録・幸福と7つの視点で、アートを掘り下げていきます。
「聖俗」のゾーンには、新収蔵の《洛中洛外図屏風》も展示。継ぎ目のない15mの1枚ガラスの展示ケースにより、細かな部分までしっかり楽しむ事ができます。
4階と5階のビューデッキは、展示室とつながった展望休憩コーナー。嬉しい事に電源もあるので、スマホの充電も可能です。館内は撮影禁止マークのついている作品以外は撮影できるため、お気に入りの一点をSNSで発信するのもOKです。
あらゆる面で最先端の美術館になったアーティゾン美術館。現代美術が展示される次回の展覧会も楽しみです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年1月16日 ]