江戸時代中期の画家、尾形光琳。高級呉服商の家に生まれ、幼い頃から服飾の文様に親しんでいた光琳は、屏風や掛幅(掛け軸)などの絵画だけではなく、硯箱や皿なども手がけた工芸家でもありました。
デザイン性の高い絵画は、日本美術の代表のような存在。美術の教科書などでお馴染みと思います。
本展では光琳の最初期の作品から、酒井抱一による『光琳百図』に所載された作品までを紹介。その画業の歩みを振り返ります。
初期の画業展覧会の目玉は、もちろんふたつの金屏風。根津美術館が所蔵する国宝「燕子花図屏風」と、ニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されている「八橋図屏風」です。
「八橋図屏風」の来日は、昭和47年以来。ふたつの金屏風が一堂に展示されたのは、なんと大正4年以来となります。
制作されたのは「燕子花図屏風」が先で、その10数年後に「八橋図屏風」が描かれました。ここでも同様に金地画面いっぱいに燕子花が描かれていますが、右上から左下にかけて、黒っぽい橋が架かっているのが大きな違いです。
「燕子花図屏風」と「八橋図屏風」美術館では、展示室1の長い壁面ケースに「燕子花図屏風」と「八橋図屏風」を並べて展示。
ふたつの屏風をじっくり見てみると、カキツバタの花弁のボリュームなど、細部には異なる面も散見されます。表現の違いを確かめるように、来館者はふたつの屏風の前を行き来して楽しんでいました。
展示室2その他にも、12人の公家の和歌が書かれた光琳最初期の作品「十二ヶ月歌意図屏風」や、晩春から夏にかけての草花を対角線状に描いた「夏草図屏風」などの優品を展示。光琳ワールドにじっくり浸ることができます。
4月28日(土)~5月20日(日)は、開館時間が1時間延長されて開催されます(午前10時~午後6時。入館は午後5時30分まで)。取材時はまだ開花前だった庭園のカキツバタも、徐々に見ごろに近づいていることでしょう。(取材:2012年4月20日)