1989年(平成元)年に60歳で死去した手塚治虫。すでに各地で何度も展覧会が開かれていますが、文学館で手塚治虫展が開かれるのは初めてのことです。
今では古典ともいえるほどの存在感がある手塚の作品ですが、その表現を新鮮な感覚で見る人も多いようで、会場には若い世代もたくさん訪れています。
壁面のグラフィックも秀逸展覧会では5章にわたって手塚ワールドを振り返ります。
ぼくはマンガ家
手塚治虫 その時代
スター・システム 愛すべきキャラクターたち
ストーリーマンガを読む力は生きる力
手塚治虫を読んでみよう!
会場は、関連資料や手塚キャラクターの等身大フィギュアなども置かれた楽しい構成。中央のケースでは「ヒョウタンツギ」も回転していました。
中央にはおなじみの「ヒョウタンツギ」が「ジャングル大帝」「鉄腕アトム」「リボンの騎士」「火の鳥」「ブラックジャック」…各所に展示されているのが、数々の自筆原稿です。
手塚世代の筆者にとっては、ホワイトでたくさん修正されたこの原稿が、単行本で読んだあの名場面の元になったのかと思うと、感慨深いものがあります。
スター・システムを紹介するコーナー / (c)手塚プロダクションブラック・ジャックの人気作品である「二つの愛」は、1話まるごと自筆原稿が展示されています。
交通事故で腕を失った寿司職人。轢いたダンプの運転手は代わりに寿司を握る特訓を続けますが、今度はその運転手が交通事故に…。少ないページ数にも関わらず奥深い人間ドラマを描いた傑作です。
壁面に展示されているのがブラックジャック「二つの愛」奥の壁面には各界著名人からのメッセージも掲げられており、松岡正剛さんは「手塚治虫はゲーテであってドストエフスキーであってアレクサンドル・デュマである」と力強く語っていました。
会場最後には手塚作品を手にとって読めるコーナーも設置。ファミリーでも楽しめそうな展覧会です。(取材:2012年5月11日)