駒井哲郎は1920年、東京生まれ。10代の頃よりエッチングに魅せられて技法を習得。東京美術大学(現東京藝術大学)卒業後、1950年に美術団体・春陽会の第27回展で春陽会賞を受賞し、一躍注目の新人となりました。
フランスに留学した際には本場の作品に驚嘆、一時は自信を喪失するも、帰国後に徐々に立ち直り相次いで美術展で活躍します。東京藝術大学や多摩美術大学でも教鞭をとるなど、後進の指導にも尽力しました。油が乗り切った1976年、舌癌のために56歳の若さで死去しました。
会場展覧会は8章構成ですが、前期と後期で4章づつ。全作品が入れ替わります。
第1章 銅版画への道
第2章 夢の開花
第3章 夢の瓦解そして再生
第4章 充実する制作:詩画集『からんどりえ』まで
第5章 新たな表現を求めて
第6章 充実の刻
第7章 未だ見果てぬ夢、色彩の開花
第8章 白と黒の心象風景と乱舞する色彩
戦後の荒廃した日本において真摯に銅版画に向き合い、パイオニアとして活躍した駒井。駒井の内面を写し取ったような作品は見るものの心をとらえます。
豊富な作品とともにみどころのひとつが、駒井の技法を解説した特別展示コーナー。駒井の薫陶を受けた多摩美術大学教授の渡辺達正氏が技法を研究、その成果が紹介されています。
貴重なエッチングの原版や、駒井が用いた道具も展示。遺されたポートレイトには、ダンディな駒井の姿が数多く写っていました。
駒井が用いた道具なども本展の作品は資生堂名誉会長の福原義春氏が蒐集したコレクションですが、このたび世田谷美術館に寄贈されることになりました。
展覧会の前期は5月27日(日)までで、5月30日(水)からの後期は全作品が入れ替わり、後半4章となります(5月29日(火)は展示替のため休室です)。
世田谷区の砧公園にある
世田谷美術館は、1986年の開館。メンテナンス工事のために半年間の休館を経て、2012年3月31日にリオープンしました。空調機器の入れ替えのほか、内外装の各所をクリーニング。開館当初の美しい姿が甦りました。
緑豊かな砧公園と世田谷美術館美術館地下には「Cafe Bauchant(カフェ・ボーシャン)」もオープン。オープンエアーのパティオは、ペット同伴でも利用できます。看板メニューのガレット(フランス・ブルターニュ地方の郷土料理)の他にも、サンドウィッチやデザートも豊富。テイクアウトもできるので、公園利用の方の利用も多いそうです。(取材:2012年5月17日)