もとは二本の丸太が架かっていたことから「二本橋」といわれていた、日本橋。徳川家康が木造の橋を架けたのは1603年のことです。江戸でもっとも賑わう場所として、多くの浮世絵に描かれる人気スポットになりました。
日本橋は木造の時代には何度も火事で消失しましたが、明治44年に石造になった後は、関東大震災や大戦の戦火も乗り越えました。1999年には国の重要文化財に指定されています。
文明開化後の日本橋400年以上の歴史を持つ日本橋。実は江戸東京博物館とも縁が深い存在です。
常設展示も見どころが多い同館ですが、中でも人気のスポットが、六階に架けられた日本橋です。幕末期の日本橋の北側半分を、当時と同じ材料(ケヤキとヒノキ)を実物大で復元したもの。ここを渡って上から芝居小屋などを眺めるのは、定番のコースです。
また、同館のシンボルキャラクター「ギボちゃん」も、日本橋欄干の擬宝珠(ぎぼし)から生まれたもの。ご存知でしたか?
関東大震災以降の日本橋「日本橋の絵」といってすぐに思い出されるのが、歌川広重の《東海道五拾三次之内(とうかいどうごじゅうさんつぎのうち) 日本橋 朝之景(あさのけい)》。太鼓橋の上を大名行列が進む、お馴染みの絵です。
会場では広重の絵をはじめ、戦後の日本橋までを時代を追って紹介していきます。
会場前半には、お馴染みの歌川広重の絵も展示の目玉のひとつが、18世紀中頃に制作された《隅田川風物図巻》。約10メートルに及ぶ長大な絵巻に、日本橋をはじめとしたさまざまな橋や河岸の建物、舟遊びの様子などが描かれています。
注目されるのは、この絵巻に「影からくり絵」の細工が施されていること。裏側から灯を当てると、舟の提灯や家の窓などに光がともったように見えます。絵巻にこのような細工がされているのは極めて珍しいことです。
影からくり絵の《隅田川風物図巻》会場出口では、画家の山口晃さんが描いた浮世絵、《新東都名所 東海道中 日本橋 改》も展示されています。版下絵(はんしたえ)を山口晃さんが制作、アダチ版画研究所の彫師・摺師が、伝統の木版画技術で浮世絵を制作しました。
展覧会の音声ガイドは、落語家の林家三平さんと奥様の国分佐智子さんが担当。軽快な口調で日本橋の魅力を案内しています。(取材:2012年5月25日)
※展示室内は許可を得て撮影しています。