鈴木常司(すずきつねし 1930-2000)は、ポーラの創業二代目。経営学を学ぶために5年の予定でアメリカに留学しましたが、父の急逝により7カ月で帰国、23歳で社長に就任しました。
ポーラを飛躍的に成長させた経営者ですが、コレクターとしての顔は意外なほど知られていません。
第3章「絵画の照らす道 ─ ルオーとルドン」日本のコレクターといえば大原孫三郎(大原美術館)、石橋正二郎(ブリヂストン美術館)などが有名ですが、ともにその活動は戦前のこと。鈴木がはじめて美術品を購入したのは1958年で、以後2000年までに約1万点を集めた鈴木は、まさに「戦後最大のコレクター」と呼ぶにふさわしい人物です。
コレクションは当時はポーラ五反田ビルの旧会長室などで展示されていました。役員フロアのエレベーターを降りると通路には名画が奈良美、あたかも著名な美術館のような雰囲気だったといいます。
第5章「美の女神たち」から、黒田清輝《野辺》本展は1年かけて行われる「コレクター鈴木常司 美へのまなざし」の第I期。特集展示として19点所蔵しているピカソを紹介するなど、数々のコレクションを12章で紹介します。
通常のポーラ美術館の企画展は展示室1と2で開催されることが多いのですが、今回は全館を使って企画展となります。
ルノアールの3作品。右端が現在の看板娘《レースの帽子の少女》鈴木は寡黙な人で、自らのコレクションについてあまり語らなかったそうですが、審美眼が優れたアドバイザーの助言を受けることも多いコレクターの世界において、独学で美術を学び、体系的にコレクションを広げていきました。
そのコレクションは1989年に開催された地方博覧会「SUNPU博」で、初めて一般に公開。大きな反響を受けて鈴木は美術館の建設を決意しますが、残念ながら開館を待たずに2000年に死去。美術館の開館は2年後のことでした。
第5章「美の女神たち」から、岡田三郎助《あやめの衣》「コレクター鈴木常司 美へのまなざし」の第II期(2012年10月5日~2013年2月26日)の特集展示はモネ、第III期(2013年3月1日~7月7日)は杉山寧で開催されます。(取材:2012年7月18日)