「国宝・重文の指定件数で全国4位」という、あまり知られていない実力を持つ滋賀県。近江の名宝展が東京で開催されるのも、実は今回が初めてです。
会場の冒頭は小さな金銅仏の展示から始まります。照度を落とした展示室に小さな仏像が浮かび上がるさまは、トーハクの法隆寺宝物館のような雰囲気です。
奥に進むと金工品も登場します。西明寺から出品されている密教法具は、修行者が一定の地位に上がる際に行われる儀式で使うもの。密教独特の神秘的な形が特徴的です。
《金銅密教法具》西明寺なんといっても本展最大の目玉は、この展示室4でしょう。三方の壁面ケースに23体の仏像が並ぶさまは神々しいほどです(仏像の数は展示期間によって異なります)。
仏像は大型のものが多く、一番大きいものは人の背丈ほど。さらに展示品の大部分は国・県・市指定の文化財という豪華さです。もちろん指定の有無=作品の優劣とは限りませんが、これだけの仏像が一度に東京に移動して滋賀県の観光は大丈夫なんでしょうか、といらぬ心配まで頭をよぎります。
仏像が並ぶ展示室4仏像は金色の輝きが残る千手観音、現在とはだいぶイメージが違う大黒天、迫力のある毘沙門天や広目天など、その顔つきやポーズもさまざま。見る方の好みに応じて楽しむことができるでしょう。
筆者のイチオシは、こちらの重文《地蔵菩薩立像 栄快作》。近江八幡市の長命寺の所蔵で、鎌倉時代1254年の造像です。光背(仏像の背部にある後光の部分)が残っており、慈悲深い表情と佇まいが印象に残りました。
重文《地蔵菩薩立像 栄快作》長命寺最後の展示室7は仏画です。仏画は、もちろん宗教画。その意図はなんとなく分かっていても、絵の意味をきちっと理解するとさらに楽しめることは言うまでもありません。
そこで特筆しておきたいのが、本展で購入できるガイドブック「イラストで図解 仏画」(300円)です。16ページの小冊子ですが、これがあなどるなかれ。神奈川県立金沢文庫主任学芸員の向坂卓也さんによる達者なイラストと解説で、「両界曼荼羅」「阿弥陀来迎図」などの難解な仏教の世界が楽しく紹介されてます。仏教なので難しい漢字が多いのですが、嬉しいことに総ルビ入り。小学校高学年ぐらいからならこどもでも楽しめそうです。
展示室7には仏画の数々また今回は関連展示として、美術館が入っている日本橋三井タワーの1階アトリウムで、滋賀県と滋賀県立琵琶湖文化館が主催する写真パネル展「水と神と仏の近江」も開催中です(9月23日(日)まで)。こちらは入場無料、展覧会にお越しの際には同時にお楽しみください。(取材:2012年9月7日)