根津美術館が所蔵する「平家物語画帖」は、江戸時代の17~18世紀の作品。詞と絵が交互に連続し、絵巻物のような体裁の横長の作品が蛇腹に折られており、上・中・下の3帖になっています。
展覧会では壁面の展示ケースに広げられて紹介されていますが、根津美術館の規模をもってしても、作品が長すぎて1度での紹介は無理。前・後期の2期で、はじめて全120面を見ることができます。
会場各々の扇面は上弦が約25cmと、意外に小ぶり。実用性がある扇と比べると、約半分の大きさです。展覧会の図録では、同様の小扇面の平家物語として「ベルリン本」「徳川本」「遠山本」との比較も紹介されており、これらは同じ工房の作品と推測されています。
展示された「平家物語画帖」を見ると、海を描いた青い部分や、山野の緑は色鮮やか。前期展示では、能の演目「清経」で知られる「清経の最期の事」や、義経の奇襲「坂落しの事」などを見ることができますが、前述のとおり2期に分けた展示です。安徳天皇を描いた「先帝の御入水の事」などが見たい方は、ぜひ後期もお越しください。
「緒環の事」「清経の最期の事」「水島合戦の事」…と続きます「平家物語画帖」だけでなく、平家物語に関連する作品も展示されています。精巧な小柄(こづか:刀に付属している小刀の柄)、琵琶、源平合戦図屏風なども目を惹きました。
源平合戦図屏風同時開催として、2階の展示室5では「平家物語の能面」展も開催中。ここでは「敦盛」「八島」「熊野」など、平家物語を題材にした演能の面が展示されています。
「平家物語の能面」会場いかにも根津美術館らしい雅やかな展覧会。すでにご存知の方も多いと思いますが、この種の展覧会がお好きな方向けに、「根津倶楽部」も改めてご紹介しておきましょう。
「根津倶楽部」は今年の7月末に従来の制度からグレードアップして、開催期間中の展覧会を何度でも観覧できる年間パスポート制度になりました。
展覧会ごとに招待券(1名様用)が1枚付いてくるので、ペアでの入場も可能。入会金は3,000円、年会費は8,000円で、
根津美術館にて受け付けています。(取材:2012年9月7日)