IM
    レポート
    維新の洋画家 川村清雄
    【2025年度中まで全館休館予定】東京都江戸東京博物館 | 東京都
    ‘日本風洋画’を探求した、知られざる巨匠
    川村清雄(かわむらきよお)の名前を聞いてピンと来る方は、よっぽどの美術ツウ。明治初期に留学して油彩を学んだものの、帰国後の日本洋画壇の潮流から外れ、次第に忘れられていった「知られざる巨匠」、18年ぶりの回顧展が江戸東京博物館で開催中です。
    右の《建国》は初の里帰り
    《大久保一翁肖像》(右)
    左から《形見の直垂》《江戸城明渡の帰途(勝海舟江戸開城図)》
    左から《徳川家茂像》《徳川家定像》《徳川吉宗像》
    左から《アヒルと少年》下絵、《子供を連れた女》
    《福澤諭吉肖像》(左)
    《水辺の楊柳》(左)
    《花鳥図》(左)
    会場
    幕末に旗本の家に生まれた川村清雄。維新後の徳川家の派遣留学生として、明治4年に渡米します。目的は政治や法律の習得でしたが、画才を見出された清雄は絵画修行に転進。その後パリ、ヴェネチアに移り、油彩画を学びます。

    維新後の徳川家の後見役は大久保一翁(いちおう)と勝海舟でした。特に海舟と清雄の親交は深く、海舟は「私の隠し子だ」と冗談を言うほど可愛がったといいます。


    《江戸城明渡の帰途(勝海舟江戸開城図)》

    清雄は明治14年に帰国。海舟は清雄のために自邸内に画室を建てて、その画業を支援しました。

    清雄は海舟の仲介で海軍将校の肖像画や海戦図などを制作。また、歴代将軍像を油彩で描くという、旧幕臣にとって栄誉ある仕事も手がけています。


    歴代将軍像。14代将軍家茂、13代将軍家定、8代将軍吉宗の順。

    清雄の洋画は背景に金銀箔を用いたり、古来から伝わる文様を使ったりと、日本風の感覚を融合させた作品が目立ちます。

    イタリアで学びながらも日本的な感性を大事にしていた清雄ですが、当時はフランス帰りの黒田清輝らの勢力が強まっていた時代。また日本画と洋画の区分も進み、清雄は傍流となっていきます。

    次第に展覧会や美術教育からも離れ、画壇から忘れられた存在となってしまいました。


    会場

    展覧会のメインビジュアルになっている《建国》は、清雄の晩年の傑作です。来日していたフランス人学者が清雄の作品に感激し、パリの美術館に収める絵を依頼したもので、今回が初めての里帰りとなります。

    剣、鏡、勾玉の中央で、鶏が暁を告げている寓意的な絵ですが、題材は天岩戸の神話です。背景は金地、支持体は絹本と、まさに日本風の洋画を追求していた清雄ならではの作品といえます。


    《建国》

    歴史的な影響を大きく受けた作家のため、美術展にも関わらず歴史資料が多い本展について、担当の落合則子学芸員は「歴史と美術のハイブリッド展で、まるで‘大河ドラマ展’のよう」と説明していました(江戸東京博物館では大河ドラマにちなんだ企画展を毎年行っています)。

    日本洋画の先駆者として充分な力量を持ちながらも、時代の流れの中で忘れられつつある巨匠。逆に大河ドラマの主役として推薦したいと思いました。(取材:2012年10月9日)

    福沢諭吉を描いた絵師―川村清雄伝

    林 えり子 (著)

    慶應義塾大学出版会
    ¥ 2,520

    料金一般当日:1,300円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon

     
    会場
    会期
    2012年10月8日(月)~12月2日(日)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:30
    ※入館は閉館の30分前まで。
    休館日
    月曜日(ただし、10月8日は開館)、10月9日 (火)
    住所
    東京都墨田区横網1-4-1
    電話 03-3626-9974(代表)
    公式サイト http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/
    料金
    【特別展専用券】
    一般 1,300円(1,040円) /
    大学生・専門学校生 1,040円(830円) /
    中学生(都外)・高校生・65歳以上 650円(520円) /
    小学生・中学生(都内) 650円(520円)
    【特別展・常設展共通券】
    一般 1,520円(1,210円) /
    大学生・専門学校生 1,210円(960円) /
    中学生(都外)・高校生・65歳以上 760円(600円) /
    小学生・中学生(都内) なし
    ※小学生と都内に在住・在学の中学生は、常設展覧料が無料のため、共通券はありません。
    【特別展前売券】
    一般 1,100円 / 大学生・専門学校生 840円
    小学生・中学生・65歳以上 450円
    展覧会詳細 維新の洋画家 川村清雄 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    大阪府立博物館 学芸員募集(考古・古代史) [大阪府立近つ飛鳥博物館 又は 大阪府立弥生文化博物館]
    大阪府
    【公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団】学芸員募集 [ポーラ伝統文化振興財団(品川区西五反田)141-0031 東京都品川区西五反田2-2-10 ポーラ五反田第二ビル]
    東京都
    丸沼芸術の森 運営スタッフ募集中! [丸沼芸術の森]
    埼玉県
    八尾市歴史民俗資料館 学芸員募集中! [八尾市歴史民俗資料館での学芸員職]
    大阪府
    観峰館 学芸員募集中! [観峰館]
    滋賀県
    展覧会ランキング
    1
    東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ) | 東京都
    逆境回顧録 大カイジ展
    開催中[あと44日]
    2024年3月16日(土)〜5月12日(日)
    2
    SOMPO美術館 | 東京都
    北欧の神秘 ― ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画
    開催中[あと72日]
    2024年3月23日(土)〜6月9日(日)
    3
    東京都美術館 | 東京都
    印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年1月27日(土)〜4月7日(日)
    4
    東京国立近代美術館 | 東京都
    美術館の春まつり
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年3月15日(金)〜4月7日(日)
    5
    国立科学博物館 | 東京都
    特別展「大哺乳類展3-わけてつなげて大行進」
    開催中[あと79日]
    2024年3月16日(土)〜6月16日(日)