黒船来航により、開国の道へ進んだ日本。渡米して鉄道に乗った福澤諭吉や渋沢栄一らはその有用性を認識していたものの、明治維新後の財政問題や、国防を優先すべきという声もあり、その導入には賛否両論がありました。
中央集権体制の確立と殖産興業の推進のために導入が正式に決定したのが1869年。翌年には着工し、そのわずか2年半後に開業に至りました。
会場は4章構成。鉄道を知らなかった江戸末期から、黒船が持ってきた蒸気機関車の模型、明治5年の鉄道開業、そして鉄道の普及まで、鉄道開業の前後を横断的に紹介しています。
勝海舟が描いたといわれている蒸気車の図、重要文化財に指定されている鉄道寮事務簿など、珍しい資料も並びます。
会場企画展のメインは3章の「鉄道開業式」。1872年10月14日に行われた開業式の雰囲気を会場で再現しています。
当時は「陸蒸気」(おかじょうき)と呼ばれていた鉄道。実は当初の開業式は3日前に予定されていましたが、豪雨のために延期。仕切りなおしとなった当日は晴天に恵まれたそうです。
式典には明治天皇も臨席。当時の絵画を参考に、会場には紅白の提灯が下げられた緑のゲートが作られ、花火が打ち上げられます。
3章「鉄道開業式」この章には鉄道職員の制服(複製)も展示。
もちろんレトロっぽさは否めませんが、なかなかオシャレです。だいぶ小さめに見えるのは、当時の日本人の体格が現在よりずっと小さかったためです。
制服 改札方(複製)開業後は民間資本による鉄道建設が促進され、全国各地に路線が拡大。日清・日露戦争後に主要17私鉄が国に買収され、国有鉄道網が完成しました。
展覧会の最後は東京駅の模型。東京駅は鉄道開業の42年後に中央停車場として建設。丸の内駅舎の復元工事が10月1日に竣工したのは記憶に新しいところです。
最後に
鉄道博物館についてもご紹介します。
JR東日本の創立20周年を記念し、2007年に開館した鉄博(てっぱく)。実物の車両が展示された「ヒストリーゾーン」、部品や模型などで鉄道の原理や仕組みなどを学習できる「ラーニングゾーン」など、すっかり鉄道ファンにはおなじみのスポットとなりました。人気のシミュレータのほか、3歳以下が遊べるキッズルームや、屋外には鉄道をかたどったオリジナル遊具もあり、大人から子どもまで安心して楽しめます。
本展で紹介している鉄道開業にあたってイギリスから輸入した「1号機関車」は、ヒストリーゾーンで常設展示。こちらは国の重要文化財に指定されています。(取材:2012年10月19日)
「ヒストリーゾーン」を望む