「水彩画といえば英国」というイメージがありますが、実はドイツやオランダの方が先。16世紀頃に油絵の習作や素描の色づけとして描かれており、英国に入ってきたのは17世紀頃です。
風景画の需要拡大にともなって普及が進み、国民的美術として発展。18世紀後半から19世紀前半に全盛期を迎えました。
第3章「グランド・ツアー、そして東方へ」展覧会は7章構成、作品は約150点です。
多くの作家が紹介されていますが、別格はJ.M.W.ターナー。第4章は丸々すべてがターナーで、ここだけで24点が出展されています(ターナーの絵は1章と8章にもあり、全部で30点です)。
ウィットワース美術館は、水彩画家としてのターナーの活動期間全般にわたって作品を所有。ターナーのミニ回顧展のように、画業の変遷を楽しむことができます。
第4章「ターナーの芸術」から。ターナー初期の作品画法については、とても研究熱心だったターナー。初期の作品では顔料の塗った面を爪でひっかいてハイライトにしたり(そのために人差し指の爪を伸ばしていたといいます)、建築物のディテールを描く際には毛嫌いしていたグワッシュも用いたりと、さまざまなチャレンジを行いました。
特に評価が高いのは、スイスの風景を描いた晩年の作品。《ルツェルン湖の月明かり、彼方にリギ山を望む》は、ターナーの水彩画の最高峰とも言われています。
第4章「ターナーの芸術」から。動画の3点目が《ルツェルン湖の月明かり、彼方にリギ山を望む》第6章は「ラファエル前派と細密描写」。ここでもロセッティやミレイなど、日本でも人気の19世紀後半の画家が紹介されています。
ロセッティの《窓辺の淑女》は、ウィリアム・モリスの妻であるジェイン・モリスがモデルです。ロセッティとジェイン・モリスはいわゆる不倫の関係。印象的な表情は、ロセッティの作品に良く登場します。
第6章「ラファエル前派と細密描写」油彩と違って透明感のある水彩画は、穏やかな主題の絵画にぴったり。素朴でやわらかい雰囲気は、理屈抜きで私たち日本人にもしっくりきます。
Bunkamura ザ・ミュージアムでの開催は2012年12月9日まで。この後は
新潟県立万代島美術館に巡回します(2012年12月18日~2013年3月10日)。(取材:2012年10月19日)