記念すべき100本目にあたるのは、歌川国芳(うたがわくによし)とその系譜を辿る企画です。
幕末の浮世絵師、歌川国芳。卓越した構成力とユーモアあふれる作品で、「奇想の画家」もすっかりメジャーになりました。近年は何度も回顧展が開催されています。
今回の展覧会は国芳だけでなく、その門弟と一派に着目。国芳という源泉から、日本美術史に大きく広がっていた大河を全4章で展観していきます。
第1章:歌川国芳と幕末明治の絵師たち
(歌川国芳、歌川芳虎、歌川芳艶、歌川芳藤、落合芳幾ほか)
第2章:歌川国芳と近代日本画の系譜
(河鍋暁斎、月岡芳年、水野年方、鏑木清方、鰭崎英朋ほか)
第3章:歌川国芳と洋風表現:五姓田芳柳とその一派
(五姓田芳柳、五姓田義松、渡辺幽香ほか)
第4章:郷土会の画家たちと新版画運動
(鏑木清方、寺島紫明、伊東深水、川瀬巴水、笠松紫浪ほか)
多数の弟子をもっていた国芳。その中でも最も師の本領を受け継いだといわれているのは、月岡芳年(つきおかよしとし)です。師ゆずりの武者絵、役者絵、美人画などで活躍。血みどろの「無残絵(残酷絵)」でも知られています。
河鍋暁斎(かわなべきょうさい)もずば抜けた才能を持つ弟子でした。幕末から明治にかけ、暁斎も多くの戯画、風刺画などを残しています。
別の系譜として、洋風表現で一派をなした五姓田芳柳(ごせだほうりゅう)もいます。芳柳は後に「横浜絵」とよばれる和洋折衷画を描きはじめ、この一派は後年には日本初の洋画の美術団体である明治美術会などにつながっていきます。
月岡芳年の流れはさらに広がり、弟子には歴史画の水野年方(みずのとしかた)、孫弟子に物語絵・風俗画の鏑木清方(かぶらききよかた)、さらにその弟子には伊東深水(いとうしんすい)や寺島紫明(てらしましめい)などが連なり、日本画の大きな流れとなりました。
会場展示風景取材した2012年11月3日(土)は、横浜美術館開館記念日と企画展100本目を記念して展覧会は無料公開。館内は多くの来館者で賑わっていたため、いつもの動画レポートは1本しかご紹介できませんが、みどころ満載の豪華展です。
版画・日本画が多いので、作品保護の理由から前期と後期で展示替えがあります(前期は12月5日まで、後期は12月7日から)。大判三枚続の髑髏の浮世絵、歌川国芳「相馬の古内裏」は前期、妖しい目つきのマーメイド、鏑木清方「妖魚」は後期。両方とも堪能してください。和装で行けば100円割引です!(取材:2012年11月3日)