実験工房のメンバーは、秋山邦晴[音楽評論家、詩人、作曲家]、今井直次[舞台照明家]、大辻清司[写真家]、北代省三[美術家、写真家]、駒井哲郎[銅版画家]、佐藤慶次郎[作曲家]、鈴木博義[作曲家]、園田高弘[ピアニスト]、武満徹[作曲家]、福島和夫[作曲家、音楽学者]、福島秀子[画家]、山口勝弘[環境芸術家]、山崎英夫[エンジニア]、湯浅譲二[作曲家](※五十音順)。結成された1951年では、全員が21歳~31歳という若さでした。名付け親は詩人・美術批評家の瀧口修造(当時48歳)です。
会場展覧会は「前夜」「実験工房の時代」「1960年代へ」の3章構成。絵画、立体、映像、写真のほか、楽譜や公演プログラムなどの関連資料まで約450点が展示されています。
ひときわ目に止まるのは、会場各所に吊るされた北代省三によるモビール。空調の吹き出し口近くに設置され、ゆっくりと動きます。
北代省三によるモビール近年になって日本のコンテンポラリー・アートは国際的に再評価される動きが高まっており、実験工房もロンドンやパリでも紹介されています。
国際的な評価の流れを受けるように始まった本展。日本の公立美術館で実験工房の全貌を総合的に紹介する展覧会としては、初めての機会となりました。神奈川を皮切りに福島(
いわき市立美術館)、富山(
富山県立近代美術館)、福岡(
北九州市立美術館 分館)、東京(
世田谷美術館)と巡回します。
会場本展は
神奈川県立近代美術館 鎌倉のほか、一部は
鎌倉別館にも展示されています。
鎌倉別館では自転車のPR用に製作された映画「銀輪」(監督:松本俊夫、音楽:武満徹、美術:北代省三、山口勝弘)も紹介。この作品には特殊撮影に円谷英二も参加しています。長く所在が不明でしたが、2005年に再発見され、デジタル復元版が2009年に作成されました。
鎌倉別館での展示1951年には東京通信工業(現ソニー)が開発したテープレコーダーや、オートスライド(テープレコーダーとスライド映像を同調させる機器)といった最新技術を芸術分野に利用した実験工房。まさに‘実験的’ながらも開拓精神あふれるその活動は、大きな足跡を残しました。
特筆したいのは展覧会図録。充実した解説に加え、実験工房メンバー(今井直次、福島和夫、山口勝弘、湯浅譲二)による座談会も収録されていて、読み応えたっぷりです。ぜひ会場で手にとってみてください。
神奈川県立近代美術館 鎌倉では、展覧会にちなんだ関連プログラムも用意しています。2月3日(日)にはガラスの球体を使ったモビールを作るワークショップ、2月16日(土)は担当学芸員によるギャラリートーク、3月10日(日)にはミュージック・コンクレートの再現コンサートも行われます。詳しくは公式サイトでご確認ください。(取材:2013年1月22日)
| | ドキュメント 実験工房 2010
大谷 省吾 (著), 大日方 欣一 (著), 山口 勝弘 (著), 東京パブリッシングハウス (編集), 西澤晴美 (編集) 東京パブリッシングハウス |