昨年開館30周年を迎えた埼玉県立近代美術館。本展は館が所蔵している作品を紹介する、いわゆるコレクション展です。
ただ、一般的なコレクション展は名品を100点程度に絞るのが常識。今回は実に32テーマ、資料と作品をあわせて約1000点が出展という、前代未聞の超大型展となりました。
会場これだけの数の展示ですから、会場は作品であふれんばかりです。企画展示室、常設展示室はもちろん、エントランスや屋外も含め、あらゆるところに作品が並びます。
テーマ11「百花繚乱」を見ると、2段掛けはもちろん、3段掛けや4段掛けまでも。近年の企画展は壁面の余白を活かした構成が多いこともあり、その展示手法はかなりのインパクトです。
テーマ11「百花繚乱」。まるで画廊画のようです。会場の全てが濃密ですが、あえてひとつだけ見せ場をあげるならここでしょうか。
テーマ12の「大熊家コレクションの精華」では、平成19年度に川口市の旧家・大熊家から寄贈された近代日本画の優品を紹介。横山大観の10点を含め、美しい軸物(掛け軸)が一堂に並びます。
見事な軸物が並ぶテーマ12「大熊家コレクションの精華」32のテーマもなかなかユニーク。単に作品ジャンルや年代による分類ではありません。
テーマ22「印象派研究の部屋」は、机や資料を置いて印象派の展覧会を企画している学芸員の研究をイメージしました。隣では実際に印象派の作品が展示されています。
奥にはモネなど、印象派が3点テーマ31「ハイド・アンド・シーク(美術館のかくれんぼ)」では、美術館各所に潜む作品を探します。コインロッカーの中に、受付の裏に、ミュージアムのショップの棚に…。 なかには、こんなところにもありました。
《中銀カプセルタワービル住宅カプセル》は、森美術館・メタボリズム展での出展から埼玉県立近代美術館の所蔵に。そして、1967年デザインの名作椅子《ブロウ》はこの中に。大型の企画展は耳目を集めますが、間近な美術館にあるお宝は意外と目が届かないもの。隠された実力を堪能できる絶好の機会です。(取材:2013年4月30日)