国際浮世絵学会創立50周年を記念して開催される本展。「大浮世絵展」というストレートなタイトルで、専門性の高いテーマは設けず、誰でも楽しく見られることがポイントです。
展示構成にあたっては、良く知られている作品を重点的にピックアップしました。切手の図柄に使われた、あるいは某メーカーのお茶漬けのオマケで見た、等々、みんなの記憶に残る浮世絵を選定。ずらりと並んだ作品は「浮世絵の教科書」ともいえる趣になりました。
会場冒頭は《風俗図屏風(彦根屏風)》から(展示は1/2~1/14)展覧会は歴史順の6章構成。彦根屏風から新版画まで、ざっと330年を辿っていきます。
第1章「浮世絵前夜」
第2章「浮世絵のあけぼの」
第3章「錦絵の誕生」
第4章「浮世絵の黄金期」
第5章「浮世絵のさらなる展開」
第6章「新たなるステージへ」
「浮世絵の祖」菱川師宣、木版多色刷りの錦絵を完成させた鈴木春信など会場中盤では、浮世絵の黄金時代が紹介されます。八頭身美女を生んだ鳥居清長、大首絵の美人画を描いた喜多川歌麿、役者絵で人気を博した歌川豊国ら、江戸の人々を魅了した人気絵師たち。諸説唱えられる謎の絵師、東洲斎写楽もこの時代です。
喜多川歌麿の《難波屋おきた》は、珍しい両面刷りの作品(展示は1/2~1/14)。一枚の紙の裏表にピッタリ合うように刷られている驚異的な浮世絵です。
両面摺りの作品は、喜多川歌麿の《難波屋おきた》(展示は1/2~1/14)江戸の末期になると、浮世絵はさらに発展。役者絵と美人画に加えて風景画も人気を呼ぶようになり、花鳥画、戯画、歴史画、武者絵とテーマも広がっていきます。
そして時代は明治へ。西洋から入ってきた化学染料を用いたり、写真に影響を受けたりと、浮世絵も大きく変容していきます。
石版画や銅版画が普及するようになると相対的に木版画である浮世絵は衰退していきますが、大正時代には「新版画」として復活。展覧会は「昭和の広重」と言われた川瀬巴水で幕を閉じます。
江戸末期の歌川国芳、明治期の豊原国周、楊洲周延、小林清親海外の美術館も含めて、極めて質が高い作品が集結した本展。作品保護の観点から展示替えが多く、東京展だけでも8期に分けて作品が入れ替わります。詳しくは
公式サイトの展示替えリストをご確認ください。
なお、本展は
名古屋市博物館(2014年3月11日~5月6日)、
山口県立美術館(2014年5月16日~7月13日)に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2013年12月26日 ]