平安時代の枕草子にも「うつくしきもの(=かわいいもの)」として、幼児や雀の子が挙げられているなど、古くから「かわいい」ものを愛でる文化がある日本。展覧会では室町時代から現代までの日本美術の中から「Kawaii」をテーマに作品をピックアップしました。
年始の関係で、報道内覧会より前の1月3日(金)に始まった本展は、初日から1,000人以上のお客様が来館。英文表記の「Kawaii」とした効果か、外国人も多く訪れるなど、スタートから話題を呼んでいます。
会場会場の前半は、子どもを描いた作品から。子どもは、その小ささ、表情、仕草など「かわいい」ものの代表的な存在です。
文人のたしなみである「琴棋書画」を子どもが興じる様子を描いた伝長沢芦雪《唐子遊び図》、七福神と戯れる唐子を描いた狩野常信《七福神図》など、絵の中から声が聞こえそうな子どもたち。微笑ましい作品が並びます。
順に、伝長沢芦雪《唐子遊び図》、狩野常信《七福神図》(会期中巻替)、小川芋銭《農村春の行事絵巻》(会期中巻替)、吉村忠夫《伊勢物語》(合作)のうち「筒井筒」 いずれも山種美術館「かわいい」存在なら、動物も忘れるわけにはいきません。犬、猫、兎、鳥など、愛らしい動物が描かれた絵画は、枚挙にいとまがないほどです。
《藤袋草子絵巻》は、擬人化された猿を描いた室町時代の作品。天地19.8センチの小さな絵巻物(小絵:こえ といいます)で、人間味のある仕草をする猿の姿が、表情豊かに描かれています。
《藤袋草子絵巻》サントリー美術館(会期中巻替)Kawaii日本美術の展示は、小さな展示室(第2展示室)にも。いつもの
山種美術館は日本画が中心ですが、今回は洋画や水彩画から工芸品まで、幅広く紹介されています。
ミミズク好きだった棟方志功、単純化された線描と色彩の熊谷守一、週刊新潮の表紙絵で知られる谷内六郎など、こちらもKawaiiテイストが満開です。
会場本展は図録も特にオススメ。持ち運びに便利で書棚への収まりもいいA5版のハンディサイズはいつもと同様ですが、細部のトリミングやアップの画像が入り、解説文が吹き出し風に書かれ、より親しみやすい構成です。1冊1,000円(本体価格)、地下のミュージアム・ショップでお求めください。
なお、本展は会期中一部作品の展示替えがあります。展覧会メインビジュアルとして使われている伊藤若冲《樹花鳥獣図屏風》(静岡県立美術館)は、後期の2月4日(火)~3月2日(日)の展示となります。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年1月6日 ]