常設展示・企画展示とも、松岡清次郎が一代で蒐集した美術品のみを紹介している
松岡美術館。今回の企画展も、1,800点余の所蔵品の中からピックアップした作品で構成されています。
企画展は2階の展示室4~6で開催。展示室4の古代中国の美術品からご案内しましょう。
展示されているのは4000年以上前の壺や、後漢時代の鏡、隋や唐時代の菩薩像など、悠久の歴史の中ではぐくまれた「いのりのかたち」の数々。特に単独ケースに入った清時代の見事な工芸品《翡翠 楼閣花鳥図 挿屏》は目を惹きます。
展示室4。奥の《翡翠 楼閣花鳥図 挿屏》は清時代の作品続く展示室5と6では、日本画・油彩画のほか工芸品や装束を紹介しています。
古代中国で東の彼方にあると言われた不老不死の神山・蓬莱山、写生するだけでなく理想の世界・憧れの風景を求めて描いた山水画など。人々は「理想郷」に夢と希望を求めていました。
展示室5《寿星》。老子の教えのもと、若者が見上げているのは寿星でしょうか。描いたのは吉川霊華。
一昨年の東京国立近代美術館での回顧展も記憶に新しいところです。
《松谿閑話図》は、険しい山中の草原で四人の高士が茶を飲む姿を描いた作品。作者の田能村直入は日本再後期の文人画家で、京都府画学校(現京都市立芸術大学)の初代摂理(校長)です。
吉川霊華《寿星》と、田能村直入《松谿閑話図》この稿で
松岡美術館を取り上げるは初めてですので、1階の常設展示もご紹介しましょう。
展示室1は古代オリエント美術で、古代エジプトの木棺や石造など。展示ケース内は企画展にあわせ、今回は理想郷をテーマにした文化遺物が並びます。
展示室2にはブールデルやヘンリー・ムアなどの現代彫刻。展示室3はガンダーラの菩薩像やヒンドゥー教の神像など古代東洋彫刻が揃っています。
古代オリエント美術の展示室1と、古代東洋彫刻の展示室2白金台の自然教育園に隣接する
松岡美術館。新橋の自社ビル内に開設されましたが、2000年に松岡清次郎の私邸跡地である現在の場所に移転されました。
「ゆったり鑑賞してもらうため展示室内に監視員は置かない」「来館者の妨げにならなければ撮影・デッサンも可能」「解説板を置かずにQRコードによる解説を設置」など、ユニークなコンセプトで運営されています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年1月9日 ]