28,500件を超えている藝大コレクション。卒業生や教員の作品により、現在でもその内容は発展・充実の度合いを深めています。
今年の展覧会は絵画を中心にした構成。入口にはラファエル・コランの《花月(フロレアル)》が展示されています。東京美術学校西洋画科の最初の指導者になった黒田清輝が、パリ留学時代に師事したのがコラン。その影響もあり“野原に横たわる裸婦像”は、日本人洋画家がしばしば描きました。
ラファエル・コラン《花月(フロレアル)》東京美術学校の開校前年である1888(明治21)年にフェノロサと天心が購入を決めたのが、国宝《絵因果経》。天心はこの作品を「希代ノ名品」と記しています。
以降も藝大コレクションには多くの日本絵画の名品・優品が加わり、会場には重要文化財も含め、選りすぐりの作品が紹介されています。
国宝《絵因果経》から本展では二つの特集展示を設定、特集展示1は「女性を描く/ヌードと出会う」です。
高橋由一による重要文化財《美人(花魁)》は、愚直なまでにリアルな表現に拘った作品。今までの浮世絵とは全く異なる存在感に、モデルの花魁が泣いて怒ったと伝わります。
その隣には黒田清輝《婦人像(厨房)》。日差しに溢れた“外光派”の作品は、由一と比べると差が歴然としています。
会場中ほどには、安井曾太郎がパリ留学中に描いた木炭デッサン《裸婦》も。木炭による人体デッサンは、現在でも日本のアカデミック絵画学習では基本になっています。
特集展示1「女性を描く/ヌードと出会う」特集展示2は、室町時代の山水図、近世の文人画、江戸後期の洋風画、近代の山水画や風景画などで、日本における風景の描写を展観する「近世の山水/近代の風景 ─ 富士山図を中心に ─」。
会場は和田英作や横山大観による富士山の絵、橋本雅邦らによる風景画などが並びます。
特集展示2「近世の山水/近代の風景 ─ 富士山図を中心に ─ 」一般的な所蔵作品展の装いにも関わらず、文化財指定の作品が普通に並んでいるのは、さすがに藝大コレクション。同時開催中の「
観音の里の祈りとくらし展-びわ湖・長浜のホトケたち-」と同様、こちらも三週間のみの展示です。お見逃しなく。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年3月20日 ]