日本に臨済宗を伝え、京都最古の禅寺である建仁寺を開いた栄西禅師。茶種を宋から持ち帰って栽培した日本の茶祖としても尊崇されています。ちなみに「えいさい」とも「ようさい」とも呼ばれますが、本展では建仁寺での呼称に従って「ようさい」としています。
会場入口は《明庵栄西坐像》(神奈川・寿福寺)から。現存する栄西の像の中で最も古いこの像を含め、栄西の肖像は頭部が異様に長く角張っていますが、これは記憶力を高める厳しい修行の結果、頭が12cm伸びたという伝承に由来します。
会場入口から。奥に進むと栄西が日本にもたらした茶道を象徴する「四頭茶会」の空間が再現されています。本展の準備を進める中で、驚きの発見がありました。南宋出身の渡来僧で、建仁寺の第十一世住持(住職)になった蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)を彫った江戸時代の像内から、古い蘭渓道隆像の頭部の一部が見つかったのです。
建仁寺は何度も火災にあっているため、鎌倉時代から同寺にあった彫刻は全て失われたと考えられていましたが、残っていた像は、その形状から鎌倉時代のものと推定。一部とはいえ、最古の彫像の遺品が見つかった事となります。
ぜひ目の前で見たいものですが、残念ながら開口部より大きいため、取り出すことは不可能。会場では写真パネルで解説されています。
康乗作《蘭渓道隆坐像》(京都・西来院)の内部から、驚きの発見が建仁寺は戦国時代の戦乱で伽藍のほとんどが焼失、今の方丈は慶長四年に安国寺恵瓊が再建したものです。
再建時に障壁画を描いたのが、桃山画壇を代表する絵師のひとり、海北友松(かいほうゆうしょう 1533~1615)。会場には豪快な重文「雲龍図」をはじめ重文「竹林七賢図」、重文「琴棋書画図」、重文「山水図」、重文「花鳥図」と、方丈を彩る海北友松の障壁画が多数出展されています。
重要文化財 海北友松筆《雲龍図》建仁寺展覧会最大の目玉が、俵屋宗達による国宝《風神雷神図 屛風》。会場の一番最後に登場します。
建仁寺のみならず、日本絵画全体の中でも至宝とされ、教科書などでもよく知られる作品。金地による空間の広がり、“たらし込み”で描かれた雲、擬人化されたユーモラスな表情の二神…。余計な解説は不要と思います。お時間が許す限り、じっくりとお楽しみください。
国宝 俵屋宗達筆《風神雷神図屏風》建仁寺なお、東京国立博物館 本館7室では、2014年4月8日(火)から5月18日(日)まで、尾形光琳による重要文化財「風神雷神図屛風」を展示。この期間は宗達と光琳の「風神雷神」が6年ぶりに同時公開される事になります。なかなか味わえない両作を比べて観られる大チャンスです!
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年3月24日 ]※会期中に作品の展示替えがあります