6回目となるコレクション展。今回は鉄道とその周辺を描いた絵画を紹介していきます。
絵画は著名な職業画家による作品だけでなく、元国鉄職員などが描いた作品も紹介しているのは特徴的です。
汽車製造会社に勤めていた西田米次郎が描いた《30号機関車》は、蒸気機関車の車体がえんじ色。黒一色と思われがちな蒸気機関車のイメージを覆すもので、歴史的な資料としても価値があります。
会場入口から。鍋井克之《汽車の走る風景》は二科展への出品作。西田米次郎《30号機関車》は、えんじ色の車体が描かれています奥に進むと、展覧会メインビジュアルになっている長谷川利行《赤い汽罐車庫》が登場、実に8年ぶりの展示です。
1929年の第4回1930年協会展に出品された、112cm×194cmという大きな作品。酒浸りの末に養老院で孤独死と、エキセントリックな人生を歩んだ長谷川利行ですが、「日本のゴッホ」と称される実力は折り紙付き。車庫と地面の赤と黒々とした機関車を、力強いタッチで描きました。
隣に並ぶのは、岡田三郎助《野菊と薔薇》。一見すると鉄道の絵画とは関係なさそうですが、12号御料車の御座所に掲げられていたもの。つまり昭和天皇が移動する際にご覧になっていた絵という事になります。12号御料車の実車も、常設展示で紹介されています。
順に、長谷川三千春《電気機関車車庫》、長谷川利行《赤い汽罐車庫》と、岡田三郎助《野菊と薔薇》鉄道博物館らしいモチーフの油彩が、佐々木英夫(大山英夫)《機関車点検》。238.4cm×200.2cmと、鉄道博物館の所蔵絵画のなかで最も巨大な作品です。
並んでいる肖像画は、南満州鉄道(満鉄)の歴代総裁。詳しい経緯は分かっていませんが、昭和12年に12人の肖像画が制作されました。作品は、和田三造が2点描いた以外はすべて別の画家。岡田三郎助、中村研一、藤島武二、和田英作など錚々たる面々です(前後期で6点づつ展示されます)。
佐々木英夫(大山英夫)《機関車点検》と、歴代の満鉄総裁を描いた肖像画会場の最後では、美術品以外の鉄道の絵も展示。機関車の内部構造を紹介する説明図《機関車略図》や、淡い色彩が施された図面《6輪タンク機関車》は、美術品とはいえませんがとても美しい説明図です。
面白いのが、国の重要文化財《鉄道庁事務書類》にある「駅長助役帽子改正ノ件」。文書の間に、駅長と助役の制帽の図が差し込まれています。明治時代の行政文書には、このように事柄を補足する文章が見られました。
順に《機関車略図》、《6輪タンク機関車》、重要文化財《鉄道庁事務書類》から「駅長助役帽子改正ノ件」(《鉄道庁事務書類》の展示は4/21まで)春休みのちびっ子で賑わっている
鉄道博物館。37両の実物車両、大きな鉄道模型ジオラマ、人気の運転シミュレータとともに、力強い鉄道の絵もお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年3月27日 ]※会期中、一部の資料が展示替えされます。