展覧会は全6章、ジャン・ジャコモのコレクションの出発点である武器甲冑から始まり、絵画、時計、ガラスなど6,000点を超えるポルディ・ペッツォーリ美術館のコレクションから選りすぐりの78点ほぼすべてが初来日です。
本展のメインビジュアルにもなっているポッライウォーロの「貴婦人の肖像」は、「第4章 黄金の間コレクション」で登場します。横顔の肖像画の表現は、ルネサンス期に広く用いられましたが、この作品はその中でも最高傑作と評され、ポルディ・ペッツォーリ美術館のシンボル的存在です。緻密に描きこまれた衣服や、髪飾りなど、じっくり堪能してください。
第3章から第4章へ。ピエロ・デル・ポッライウォーロ《貴婦人の肖像》武器甲冑から始まったコレクションは、次第に金工品や絨毯、宝石などへ広がります。そして、コレクション開始から約5年後には古画の購入を開始。ルネサンスから近代まで300点を超えるコレクションに成長しました。
第6章ヴェネツィア美術および17世紀以降の美術コレクションジャン・ジャコモが、1879年に亡くなる数日前に購入した絵がボッティチェッリの「死せるキリストへの哀悼」です。
ボッティチェリの代表作である「春」や「ヴィーナスの誕生」などとは異なる鮮やかな衣服の色使い。狭い画面にひしめく人物の絶妙な構図には、キリストの死を悼む劇的なシーンを強調する、視覚的効果が盛り込まれています。
サンドロ・ボッティチェッリ《死せるキリストへの哀悼》ジャン・ジャコモの死から3年後、彼の遺言に従って、コレクションを一般公開するポルディ・ペッツォーリ美術館が開館しました。ミラノ市民やゆかりの人々からの寄贈も受けて、コレクションは現在も拡充しています。
「フランチェスコ会派聖人たちが描かれた宗教行列用十字架」も美術館開館後に収蔵されたもの。おそらくラファエロの若いころの作と考えられています。十字架の中央にはキリストの磔刑図、4つの端には聖人が描かれ、表面は聖母マリア、聖ヨハネ、聖ペテロ、マグダラのマリアが、裏面はフランチェスコ会派の諸聖人が描かれています。
ラファエッロ・サンツィオに帰属《フランチェスコ会派聖人たちが描かれた宗教行列用十字架》ジャン・ジャコモの依頼により、室内装飾家がコレクションにあわせてしつらえた美しい展示室は、1943年に第2次世界大戦で大きな被害を被りました。本展では在りし日の様子が、写真で紹介されています。
戦後、ミラノ美術保護局からの支援で美術館は再建され、その豊富なコレクションを展示する新たな展示室を追加しながら、現在も多くの人々に愛されています。
本展は東京展ののちに大阪の
あべのハルカス美術館 へ巡回します。(2014年5月31日~7月21日)
[ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2014年4月3日 ]