5章構成を2つの展示室で紹介する本展、まず1章は「戦局の悪化と画家たち ─ 池袋アトリエ村の画家を中心に ─」です。
1930年頃より、池袋周辺のアトリエ付き住宅に集まった若い芸術家たち。現在"池袋モンパルナス"と呼ばれる地域に暮らした彼らは、積極的に前衛表現に取り組みましたが、時局の悪化にともなって、さまざまな制約を受けることとなります。
1943年4月13日に、大空襲に見舞われた池袋。池袋駅前は焼け野原となり、8月の終戦を迎えます。2章「池袋の焼け跡、板橋の風景 ─ 画家の見つめた終戦 ─」では、焼け跡を描いた作品などが並びます。
3章は「戦後復興期の絵画にみる人間 ─ 社会と身体 ─ 」。戦後の自由な表現活動の中で、人体は象徴的なモチーフになりました。戦地での体験や、戦後の混乱の影響か、人体の一部をデフォルメしたり、動物に置き換えられたりする表現も目にとまります。
1章「戦局の悪化と画家たち ─ 池袋アトリエ村の画家を中心に ─」と、2章「池袋の焼け跡、板橋の風景 ─ 画家の見つめた終戦 ─」4章は「阿部展也のアトリエから ─ 造形と色彩の画家たち ─」。前衛絵画やシュルレアリスム写真で、戦前から評価が高かった阿部展也。戦後、下落合にアトリエを構えると、福島秀子、榎本和子、漆原英子、草間彌生など才能にあふれた若手の女性作家が集まるようになりました。阿部が亡くなった後も、アトリエに集った芸術家たちは美術界の最前線で活躍していきます。
最後の5章は「事件、社会を描くルポルタージュ絵画」。砂川や内灘などの基地問題、水爆実験、安保闘争など、この時代に社会を揺るがせた様々な問題は、美術家たちにとっても大きな関心事。時代の空気を受けた、挑戦的な表現です。
4章は「阿部展也のアトリエから ─ 造形と色彩の画家たち ─」と、5章「事件、社会を描くルポルタージュ絵画」「焼け跡と絵筆」の展示はここまでですが、なぜか展示室の最後には屏風が。
板橋区立美術館が所蔵する狩野永叔筆《梅桜小禽図屏風/菊ニ鶴図屏風》が、日本郵便の特殊切手「切手趣味週間」の絵柄に採用されたため、本展期間中に特別公開されているのです。
郵便切手が持つ「美しさ」や「芸術性」を知ってもらうために、毎年この時期に発行される切手趣味週間。この屏風は館蔵品の中で特に目立つ存在ではありませんが、細部まで丹念に描かれた装飾性の高い画面に白羽の矢が立ったのでしょうか。
表裏両面に描かれた屏風のため、5月11日(日)まで「梅桜小禽図屏風」、5月13日(火)からは「菊ニ鶴図屏風」が展示されます。切手は4種各82円、1シート820円。全国の郵便局で発売中です。
「切手趣味週間」の絵柄に採用された狩野永叔筆《梅桜小禽図屏風/菊ニ鶴図屏風》また、展示コーナーでは板橋区在住の木彫作家、深井隆の作品も時別展示されています。深井隆は1951年生まれ。現在は東京藝術大学で教鞭を取っており、昨年(2013年)紫綬褒章を受章。ソファーや翼、馬などをモチーフにした作品で知られています。
会場には館蔵品の2作品に加え、本展に合わせて制作された《月の庭 ─ 日月 ─》も初公開。近くに寄ると木の香りも漂ってくる、正真正銘の最新作です。
深井隆の特別展示。一番奥が、最新作の《月の庭 ─ 日月 ─》5月4日(日)と6月15日(日)には、担当学芸員が作家や作品について解説するギャラリートークを開催(いずれも14:00から)。また5月24日(土)には特別展示作家の深井隆氏による記念講演会も開催されます(partⅠ 14:00~14:45、partⅡ 15:00~15:45。先着100名)。いずれも事前申し込みは不要です。お気軽にご参加ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年4月17日 ]