阪神淡路大震災やオウム真理教事件など、社会的に大きな事件が起こった1995年。また戦後50年であり、インターネット元年でもあるため、日本の社会的・文化的にも節目といえる年でした。
展覧会は2部構成です。1部は「about 1995」と題し、いくつかのキーワードの元で1995年前後に生み出された作品を展観していきます。
最初のキーワードは「1995年の風景 郊外」。この年に幕張ニュータウンの開発が始まるなど郊外の風景が急速に変化すると同時に、郊外化にまつわるさまざまな問題にも目が向けられはじめました。ここではホンマタカシの代表作のひとつ《TOKYO SUBURBIA(東京郊外)》が展示されています。
ホンマタカシ《TOKYO SUBURBIA(東京郊外)》シリーズ 1995‐1998年キーワード「あいまいな日本の私 バッドテイスト」には、大竹伸朗による日本をテーマにした作品や、都筑響一による写真など。
「戦後50年」のキーワードには、昭和末期に日本を離れた後に帰国し、この時期に絵画制作をはじめたO JUNや、まさに戦後50年を契機に作られた会田誠の《戦争画RETURNS》シリーズなどが紹介されています。
順に、大竹伸朗《ぬりどき日本列島 シリーズ》1995-2000年 / 都築響一《「珍日本紀行」より》1993-1996年 / O JUN《光景画 ─ 宮城と一輪車》1998年 / 会田誠《たまゆら(戦争画RETURNS)》1999年1995年前後は、具象絵画も再び注目を集めはじめました。キーワードは「具象絵画の隆盛 パーソナルな日常」です。
アトリエと自宅のあいだで毎日出会う犬や風景など、目についたものをそのまま描きはじめた小林孝亘。
奈良美智は、この年に東京では初めての本格的な個展を開催。特徴的な表情の子どもの絵画は、多くの人々を魅了していく事となります。
「クロニクル 1995‐」展示風景1995年は阪神淡路大震災に端を発する「ボランティア元年」であるとともに、Windows95が発売され「インターネット元年」にもなりました。キーワードは「新しいネットワーク」です。
八谷和彦の《メガ日記》プロジェクトは、阪神淡路大震災直後のネット掲示板での投稿にインスピレーションを受けた作品。展覧会では、このメガ日記で集められたデータをもとに制作された《見ることは信じること》が出品されます。現在のTwitterやFacebookにも通じる試みです。
宮島達男の《それは変化し続ける それはあるゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》は、
東京都現代美術館の開館初期にも紹介された作品。本展で久しぶりの展示となります。
順に、八谷和彦 《見ることは信じること》 1996年 /宮島達男《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》 1998年第2部は「after 1995」と題して、この時期以降に活動をはじめた作家に焦点をあてて、館蔵の作品を展示します。
マクドナルドの紙袋を切り抜いて木を作る照屋勇賢、2011年夏に
東京都現代美術館で開催された大規模個展も記憶に新しい名和晃平、人形を作って写真に撮り、それを絵画にするという複雑な手法をとる加藤美佳などなど。近年注目を集めている作家の作品が並びます。
「クロニクル 1995‐」展示風景世の中の出来事でいえば、1995年は村山富市首相の時代。野茂が米大リーグに移籍して活躍し、PHSサービスが始まり、ゆりかもめが開業し、街にはアムラーが闊歩していました。会場最後には1995年前後の出来事が書かれた年表もあり、それぞれの視点でこの時代を感じていただけると思います。実はインターネットミュージアムも同世代。翌年の1996年から始まっています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年6月6日 ]■MOTコレクション に関するツイート