デュフィは1877年生まれ。マティスとほぼ同じ時代を生き、ともにフランスで活躍した画家です。本展では年代順にデュフィの画業を追っていく4章構成です。
デュフィといえば鮮やかな色彩と軽やかなラインの作品がよく知られますが、第一章では、まだ独自のスタイルを探している時期の作品が並びます。モネ、ブーダンやマティス、そしてセザンヌに影響を受け、印象派、フォービスム、キュビスムなど、画風が様々に転換していく様子がよくわかります。
第1章 1900-1910年代 造形的革新のただなかでデュフィは1910年頃に精力的に木版画を手掛けるようになり、モノクロの世界のなかで装飾的なデザインを磨いていきます。後に「モードの帝王」と呼ばれたファッションデザイナーのポール・ポワレと出会い、テキスタイルのデザインへと展開します。
植物や動物、パリの都市生活をモチーフにしたテキスタイルは、モードの最先端であるパリのデザイナーたちのドレスに用いられました。第2章では、デュフィが手掛けたデザインや、モデルたちの写真も展示されています。
デュフィデザインのテキスタイル。「ドーヴィルまたはレガッタ」が用いられたポール・ポワレのデイドレステキスタイルのデザインを通し、デュフィは独自のスタイルを確立させます。テキスタイルのプリントは、一色ごとに異なる版を用いて何度も擦って模様を作り出すのですが、輪郭線のなかに色彩が収まらないことがあります。色と線がそれぞれに自由に動くような独特のデュフィらしい画風は、このなかで確立したのです。
1937年のパリ万博で、デュフィは横60m、縦10mに及ぶ巨大な壁画「電気の精」を描きます。古代からの技術の発展とその発明者たちと、神々が描かれた叙事詩は、デュフィの代名詞ともいえる透明感のある鮮やかな色彩と軽やかな線で彩られています。本展では、壁画完成後に描かれたリトグラフの縮小版を見ることができます。
デュフィの代表作としてよく知られるのが、音楽を題材にした作品です。デュフィの両親は音楽好きで、その影響を受け、デュフィも音楽をテーマにした作品は若いころから何度も描いています。
『ヴァイオリンのある静物:バッハへのオマージュ』は、赤を基調とした大胆な画面で、色彩の魔術師と言われたデュフィの真骨頂。背景の花のモチーフの壁紙は、デュフィの下絵をもとにビアンキーニ社が製作したテキスタイルに由来します。
音楽絵付けした陶器や、デザインした家具なども展示されており、デュフィの豊かな才能を感じます。
可愛らしいテキスタイルを用いたオリジナルグッズも販売されているので要チェックです。
展覧会は東京展(6/7~7/27)の後、
あべのハルカス美術館(8/5~9/28)、
愛知県美術館(10/9~12/7)へ巡回します。
[ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2014年6月6日 ]