大英博物館、ルーブル美術館、メトロポリタン美術館とあわせ、世界四大博物館とも称される台北 國立故宮博物院。収蔵品は69万点に及び、ここを抜きに中国の文化を語る事はできません。
本展は、台北 國立故宮博物院の名品をアジアで初めて紹介する企画展。門外不出の名宝《翠玉白菜》(東京会場で期間限定展示)と《肉形石》(九州会場で期間限定展示)が出品されるという事もあり、開幕前から大きな話題となっていました。
図録は序章・一章・二章・三章の構成ですが、東京展の会場は10エリア+別会場の《翠玉白菜》という導線。冒頭は古代中国の水器から始まり、陶磁器、書画、工芸品などずらりと並びます。
内覧会も多くの人が訪れましたもっとも優れた文物にのみ与えられる「神品」と称されるに相応しい逸品ばかりですが、いくつかピックアップしてご紹介しましょう。
一辺25センチほどの紫檀製の小箱は《紫檀多宝格》。清朝最盛期の皇帝だった乾隆帝(けんりゅうてい)が、自身のコレクションを整理する過程で作らせた鑑賞用の宝箱です。
箱の内部は陳列棚になっていて、小さな玉器や磁器をきっちりと収納。無駄な空間はほとんどありません。
実は《紫檀多宝格》を紹介している展示室自体も、多宝格をイメージしています。囲まれた空間は正方形、上部は天を祀る玉壁を模した円形。鑑賞者自身が多宝格に入り込んだかのような構成です。
《紫檀多宝格》清時代・乾隆年間(1736~1795)公式サイトでは「《翠玉白菜》《肉形石》につづく次世代アイドル」として紹介されているのが《人と熊》。平成館会場の最後に展示されています。
《翠玉白菜》と同様に、素材の色を活かして加工・創作した「俏色(しょうしょく)」という手法。清時代の中後期に流行しました。
白い部分を人物、黒い部分を熊と見立てて彫刻した《人と熊》。高さはわずか6cmですが、じっくり見ると熊の一部には毛並みまで彫り込まれています。
《人と熊》清時代・18~19世紀そして《翠玉白菜》は、本館特別5室での展示です。台北 國立故宮博物院の最も有名な所蔵品のひとつで、現地でも連日長蛇の列ができるという逸品中の逸品です。
写真では小ぶりに思えますが実物は意外に大きく、大人の手のひらぐらい(高さ18.7cm)。ただ奥行きはあまりなく、本物の白菜よりは平べったい印象です。
翡翠(ひすい)なかでも選りすぐりの玉材を用い、素材の色をそのまま利用して巧みに彫刻。葉にはキリギリスがとまっています。白菜は純潔、バッタ類は多産を意味しています。
葉脈もくっきりと浮かび上がるドラマチックな照明演出は、
東京国立博物館ならでは。展示は7月7日(月)までのわずか2週間。混雑状況は
公式サイトのツイートでご確認ください。
《翠玉白菜》清時代・18~19世紀《翠玉白菜》はもちろんですが、それ以外もさすがは台北 國立故宮博物院。特に工芸品は目を見張るばかりです。東京展の後は
九州国立博物館でも10月7日(火)〜11月30日(日)に開催。《肉形石》だけでなく、東京展に出展されないものも多数出展されます。できれば両展とも、制覇したいところです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年6月23日 ]