メトロポリタン美術館のエジプトコレクションは約3万点。世界で最も包括的なコレクションとも称され、現在でも館独自の発掘調査が続けられています。
本展は古代エジプト美術の中から、権力を手にした女性を考察する企画。古代エジプトは家父長制でしたが、その長い歴史の中では女王もいます。
最も有名な女王はクレオパトラですが、彼女の最期はローマに征服されて自害。逆に最も成功したのが、クレオパトラから1400年ほど前に、近隣諸国と交易して安定した社会を築いた女王ハトシェプストです。会場入ってすぐに登場する頭像が、この女王です。
像は、1923年から35年にメトロポリタン美術館調査隊が行った発掘調査で、ハトシェプスト女王葬祭殿から見つかった2体の破片を合わせて復元したもの。もとは高さ3m以上の全身像でした。
《ハトシェプスト女王像の頭部》古代エジプトは多神教の世界。神話の中にも女性の姿が見て取れます。
ハトホルは繁殖や愛・美をつかさどる女神。天空の神であるホルスを守り育てるハトホルは、古代エジプト人による典型的な女性のあり方でした。
雌牛の姿で表現される事が多かったハトホル。中王国以降では、牛の耳を持つ人間の顔をした姿での表現が増えました。
第2章「愛と美の女神 ハトホル」古代エジプトには男性の神とほぼ同じ数の女神がいました。
人間と動物の体が合体している姿の神も多く、それぞれの動物によって性格づけがあります。例えばライオンは攻撃性を、カバは生命を生み出す力を象徴しています。
第3章「信仰された女神たち」王妃や王女など、王家の女性たちにまつわる品々も紹介されています。強大な権力を持った女性たちは、神殿や自分の墓所に美術品や銘板を作らせました。
《二人の王女のレリーフ》は、左の少女の胴体が正面を向いています。良く知られるように、古代エジプトでは肩を除いて常に横向きで描写されるので、珍しい作例といえます。
第4章「王妃、王女たち」 動画の最後が《二人の王女のレリーフ》第5章「王族の装身具」は、まるで高級ジュエリー店のように煌びやか。古代エジプトでは先王朝時代のはじめ(前4000年頃)から装身具を身に着けた状態で埋葬されていました。
長い二本の角を持つガゼルがついた冠は、新王国時代(前1070年頃~前1550年頃)に見られた装身具。後宮の王妃たちがハトホル女神のための儀式の際に使っていたと思われます。
第5章「王族の装身具」会場の最後には見事な棺も。古代エジプトの葬祭用具の中で、最も重要なものが棺でした。
腕を胸の上で交差させるのは、死後復活したオシリス神のポーズ。同じポーズの人型の棺を作る事で、自身をオシリス神に重ね合わせたのです。
《アメン・ラー神の歌い手ヘネトタウィの人型内棺とミイラ板》東京展は9月23日(火・祝)まで。2014年10月13日(月・祝)~2015年1月12日(月・祝)に、
神戸市立博物館に巡回します。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年7月18日 ]■メトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神 に関するツイート