展覧会メインビジュアルは、風にたなびくあごひげも涼やかな老翁。入口近くで展示されている、海北友松筆 海山元珠賛の《鍾離権図(しょうりけんず)》です。
鍾離権は中国八仙の一人。八仙は日本でいうところの七福神のような存在で、美術の世界では恰好のモチーフになっています。
本作での表現は、仙術で剣に乗って空に浮遊する姿。墨の色調も淡めで、軽快な洒脱さが漂います。
海北友松筆 海山元珠賛の《鍾離権図》現代でもそうですが、水辺に集うのは避暑の定番。芸阿弥筆 月翁周鏡ほか2僧賛《観瀑図》にも、瀧の近くに人物が描かれています。瀧の裏に書斎を構える主人を訪ねてきたのでしょう。
芸阿弥は室町時代の同朋衆(将軍の近くで芸能にあたった人々)ですが、作品の多くは応仁の乱で散逸。この《観瀑図》は確証がある唯一の作品で、国の重要文化財に指定されています。
芸阿弥筆 月翁周鏡ほか2僧賛《観瀑図》会場には焼きものも何点か。「白磁の器に濃青色の染付」という配色は、いかにも涼やかです。
かわったものでは、形状で「涼」を感じさせるものも。《染付雪柴垣文団扇形皿》は団扇をかたどった珍しい皿で、しかも絵柄は柴垣に降り積もる雪景色です。
焼きものの展示季節は盛夏のど真ん中ですが、当たり前のようにいずれは秋がやってきます。「伊年」印の《夏秋草図屏風》で、少し早い秋を感じてください。
夏から秋にかけて見られる草花を描いた屏風で、描かれているのは鉄砲百合、紫陽花、菊、撫子、萩、芙蓉など。うっすらと秋の気配が漂ってきたでしょうか。
「伊年」印《夏秋草図屏風》同時に展示室2では「高麗・朝鮮時代の仏画」、展示室5では「手紙―こころを伝える―」、展示室6は「夏の茶事」を開催中。また展覧会にあわせ、NEZU CAFEではグアバ、オレンジピール、レモンのシャーベットを盛り合わせた「涼風献上」も発売中です(税込700円 9/7まで)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年7月25日 ]■涼風献上 に関するツイート