現在のチェコ共和国周辺でボヘミアン・グラスの製造が始まったのは13世紀頃。18世紀には欧州のガラス市場を席巻し、19世紀には色彩豊かに変貌。今なお、進化し続けています。
ガラス史を辿る展覧会では必ず紹介されるボヘミアン・グラスですが、ボヘミアン・グラスだけに焦点を絞った企画展は久しぶり。1994年に百貨店で「ボヘミアン・グラス 600年の輝き」展が開催されて以来、実に20年ぶりの開催となりました。全170件、プラハ国立美術工芸博物館の所蔵品で構成されます。
会場入口から会場は歴史順の7章構成。ここではまず3章「バロックとロココ:1650~1790年頃」をご紹介しましょう。
ボヘミアのガラス製造にとって大きな転機となったのが、17世紀後半の「カリ・クリスタル(通称ボヘミアン・クリスタル)」の開発。原料にカリ(炭酸カリウム)を含むこのガラス素地は、透明度が高く、屈折率が大きい事が特徴です。カットとエングレーヴィング(ガラスに工具で傷をつけて絵を描く加工)で煌びやかに輝くことから、それまでに無かった新しい造形が次々に生み出されていきました。
3章「バロックとロココ:1650~1790年頃」ガラス展ならではの涼やかな会場を進むと、階段吹抜はまるで祭壇のよう。壁面に掲げられている写真は、プラハ国立美術工芸博物館の階段室にあるステンドグラスです。
6章は「アール・ヌーヴォー、アール・デコ、機能主義:1890年頃 ─ 第二次世界大戦」。時代の変遷によりデザインの流行も変わる中、ボヘミアン・グラスも多彩な表情を見せていきます。
6章は「アール・ヌーヴォー、アール・デコ、機能主義:1890年頃 ─ 第二次世界大戦」7章は「1945年から現代まで」。戦後チェコスロヴァキアを掌握した共産党は、外貨収入とプロパガンダの両面でガラス産業を重視し、多くの資金を投入しました。ボヘミアン・グラスは主要国際展でも結果を残し、幸いにも高い水準が守られる事となりました。
実は現代のボヘミアン・グラスは、日本とも深い関係が。特に富山市の公立専門教育機関である「富山ガラス造形研究所」は継続的にチェコ人アーティストと交流しており、会場には日本滞在中に制作された作品も紹介されます。
7章「1945年から現代まで」会期中の8月12日(火)には、夏休み特別イベント「まるごといちにち こどもびじゅつかん!」も開催。休館日を利用して「こども専用びじゅつかん」とし、小中学生とその保護者の方は無料で入館いただけます。詳しくは
公式サイトでご確認ください。
東京展の後は、少し間が空きますが愛知と兵庫に巡回。
愛知県陶磁美術館で2015年4月11日(土)~5月24日(日)、
神戸市立博物館で2015年6月6日(土)~8月30日(日)に開催されます。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年8月1日 ]