IM
    レポート
    ジョージ・ネルソン展 建築家・ライター・デザイナー・教育者
    目黒区美術館 | 東京都
    常に一歩先、米デザイン界の巨星
    第二次世界大戦後、生活の向上に伴って優れた製品デザインが生まれたミッドセンチュリー(20世紀中盤)。この時代を代表するアメリカのデザイナーが、ジョージ・ネルソンです。ネルソンを大きく紹介する国内初の展覧会が、目黒区美術館で開催中です。
    ハーマンミラー社の家具が並ぶ、「住宅」のコーナー
    《マシュマロ・ソファ》1956年
    写真パネルとネルソンの著作本が並ぶ1階エントランス・ホール
    《バブルランプ》1952年
    モスクワのアメリカ博覧会で用いられた《ジャングルジム》の模型 1959年(2008年)
    「時計」のコーナーには、ハワードミラー社の時計が
    「オフィス家具」のコーナー
    「グラフィックと企業デザイン」のコーナー
    《コンプリヘンシブ・ストレージシステム》1957年/1959-1973年
    展覧会サブタイトルにあるように、多方面で活躍したジョージ・ネルソン。製品デザインのみならず建築・インテリア・グラフィック・展覧会とどんな仕事でも引き受け、ハーマンミラー社のデザインディレクターとしてはイームズ夫妻(チャールズ&レイ・イームズ)やアレキサンダー・ジラードらを見出す慧眼の持ち主でした。

    会場は1階のエントランスホールから。階段を上がるとネルソンの代名詞ともいえる《マシュマロ・ソファ》が登場します。ネルソン事務所のアービング・ハーパーがデザインし、円盤状クッションを大量生産してソファに用いるアイディア。現在では非常に高く評価されていますが、発売当時はコスト・販売数ともに期待外れでした。

    続く展示室には、初期の製品やプロトタイプを含む家具がずらりと並びます。


    会場

    展覧会の企画に30件以上も関わったネルソン。中でも冷戦下の1959年にモスクワで開催された「アメリカ博覧会」は重要な仕事です。ネルソンは巨大なフレーム構造の「ジャングルジム」を開発し、家具や玩具などアメリカの工業製品を紹介。フルシチョフとニクソンがそれぞれの国の生活水準について「キッチン論争」を繰り広げました。

    会場では当時の写真や図面類とともに、原寸大フレームと1/6モデルが展示されています。


    モスクワのアメリカ博覧会で用いられた《ジャングルジム》

    1847年から35年以上にわたって、ハワードミラー社の製品を手掛けたネルソン。ネルソンと彼の事務所は、130種以上の時計をデザインしました。

    腕時計が普及してきた当時、壁掛け時計は時刻を知るツールとしてよりも、インテリアとしての要素が求められていました。ネルソンの時計は遊び心のあるデザインが特徴的。ただ、その中でも、同じムーブメントを用いて生産コストに配慮しています。


    「時計」のコーナー

    ネルソンはオフィス家具も手掛けました。1950年代に発表した《エグゼクティブオフィスグループ》では長方形のテーブルと収納家具をL字型に組み合わせたレイアウト。現在では良く見られますが、当時は極めて斬新な発想でした。

    1960年代の《アクションオフィス1》では、高さが異なるデスク(立ったり座ったりする事で集中力を維持する)、閉じる事ができるロールトップデスク(やりかけの仕事をそのままの状態で帰宅し、翌日すぐに再開できる)などを提案。アルコア工業デザイン賞を受賞するなど評価されましたが、商業的な面では少し時代が早すぎたようです。


    「オフィス家具」のコーナー

    ネルソンは建物の工業化に関心を持っており、《エクスペリメンタルハウス》もその過程から発想されました。

    アルミフレームと壁板からなる立方体のモジュールを組み合わせて、住む人のニーズに応じたサイズの住宅を提供するもの。多くのメディアで模型が紹介されるなど注目を集めましたが、残念ながら実現には至りませんでした。


    《エクスペリメンタルハウス》

    デザインを文化・社会・経済など大きな枠組みの中で捉えていたジョージ・ネルソン。物事を俯瞰して見る事ができる名プロデューサーとしての眼力と、常に一歩先を見据えていた先進的な発想は、現在でも眩しく感じられます。

    本展はドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムの企画による国際巡回展。アジア巡回としてオーストラリア、香港に続いての開催で、日本では目黒区美術館のみの開催です。お見逃しなく。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年8月8日 ]



    ■ジョージ・ネルソン展 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2014年7月15日(火)~9月18日(木)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00(入館は17:30まで)
    カフェ 13:00~16:00のみ営業
    休館日
    月曜日休館 ただし7月21日(月祝)、9月15日(月祝)は開館、翌日休館
    住所
    東京都目黒区目黒2-4-36
    電話 03-3714-1201
    公式サイト http://mmat.jp/exhibition/archives/ex140712
    料金
    一般 1000(800)円/大高生・65歳以上 800(600)円/小中生 無料
    ※( )内は20名以上の団体料金、障がいのある方は半額、付添者1名無料
    展覧会詳細 ジョージ・ネルソン展 建築家・ライター・デザイナー・教育者 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    大阪府立博物館 学芸員募集(考古・古代史) [大阪府立近つ飛鳥博物館 又は 大阪府立弥生文化博物館]
    大阪府
    【公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団】学芸員募集 [ポーラ伝統文化振興財団(品川区西五反田)141-0031 東京都品川区西五反田2-2-10 ポーラ五反田第二ビル]
    東京都
    丸沼芸術の森 運営スタッフ募集中! [丸沼芸術の森]
    埼玉県
    八尾市歴史民俗資料館 学芸員募集中! [八尾市歴史民俗資料館での学芸員職]
    大阪府
    観峰館 学芸員募集中! [観峰館]
    滋賀県
    展覧会ランキング
    1
    東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ) | 東京都
    逆境回顧録 大カイジ展
    開催中[あと44日]
    2024年3月16日(土)〜5月12日(日)
    2
    SOMPO美術館 | 東京都
    北欧の神秘 ― ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画
    開催中[あと72日]
    2024年3月23日(土)〜6月9日(日)
    3
    東京都美術館 | 東京都
    印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年1月27日(土)〜4月7日(日)
    4
    東京国立近代美術館 | 東京都
    美術館の春まつり
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年3月15日(金)〜4月7日(日)
    5
    国立科学博物館 | 東京都
    特別展「大哺乳類展3-わけてつなげて大行進」
    開催中[あと79日]
    2024年3月16日(土)〜6月16日(日)