「ロッテ キシリトールガム」「にほんごであそぼ」「デザインあ」と、幅広い領域で活躍する佐藤卓さん。ちひろ美術館とも縁が深く、美術館のシンボルマークをはじめ、展覧会ポスターやレターヘッド、包装紙などのデザインを手掛けています。
さらに縁を辿ると、実は佐藤卓さんはちひろ美術館がある練馬区生まれ。幼い頃は武蔵野で昆虫採集をするなど、まさにちひろの絵に出てきそうな少年でした。
会場は展示室1「佐藤卓のデザイン採集」で、佐藤卓さんの仕事の紹介から。代表的な商品デザインや、ちひろ美術館でのグラフィックデザインなどが展示されています。
傑作は千鳥屋総本家の洋菓子「チロリアン」。箱に描かれたチロル民俗衣装の5人は、口の形がチ・ロ・リ・ア・ンになっています。本展では、巨大なチロリアン人形も展示されました。
「佐藤卓のデザイン採集」展示室2「佐藤卓が選んだ、ちひろの絵 ─ ちひろの描く線画 ─ 」が、本展最大の見せ場です。
9,400点以上のちひろ作品の中から、線に着目して佐藤卓さんがセレクト。学芸員サイドからすると意外な作品も数多く選ばれ、結果的に33点が初公開作品となりました。
ちひろの作品は、確実なデッサン力がベースにあります。硬軟・強弱と線を自在に使い分け、対象に迫っていきます。
「佐藤卓が選んだ、ちひろの絵 ─ ちひろの描く線画 ─ 」展示室3は「佐藤卓が選んだ、ちひろの絵」。ここには、いわゆる「ちひろらしい」絵が並びます。
モデルなしで、10カ月と1歳のあかちゃんを描き分けられると言われるちひろ。ひとりの母親でもあったちひろは、息子のしぐさや成長を見つめる中で、どんな格好の子どもでも描ける力を身につけました。
「佐藤卓が選んだ、ちひろの絵 ─ ちひろの描く子どもたち ─ 」展示室4は「ちひろ×佐藤卓の実験室」。展示室2と3、図書室で展示しているちひろの絵に、佐藤卓さんがスパイスを加えました。
ちひろのスケッチから線を取り出してパターンデザインにした「いわさきちひろ×佐藤卓=バナー」。平面のちひろの絵からインスピレーションを受けた立体物を組み合わせた「いわさきちひろ×佐藤卓=箱」。この展示室のみは、来館者による撮影も可能です。
「ちひろ×佐藤卓の実験室」佐藤卓さんのデザインは、無駄を削ぎ落とす事で本質をあらわにしていきますが、実はちひろの絵も同じ。他の要素には頼らず、対象に誠実に向き合う事で、ちひろは子どもの感情までも描く事ができるのです。
時代を越えた二人のクリエイターによる真剣勝負。いつものちひろ美術館ファンの方からも反応が良い事に加え、本展では若い人の姿も多く見かけるそうです。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年8月18日 ]■いわさきちひろ×佐藤卓 に関するツイート