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    レポート
    天神万華鏡 ~常盤山文庫所蔵 天神コレクションより~
    渋谷区立松濤美術館 | 東京都
    頭が良くなる展覧会
    学問の神様「天神さま」として崇められる、菅原道真(845-903)。その姿は、古来からさまざまな形で表現されてきました。受験シーズンにぴったりの企画展が、渋谷区立松濤美術館で開催中です。
    展示室
    (左)《北野社頭図》狩野松栄 筆 と、現在の北野天満宮
    (左から)《束帯天神像》鈴木其一 筆 / 《束帯天神像》伝 雪舟 筆 / 《菅公像》加藤信清 筆
    (左から)《渡唐天神像》伝 近衛信伊 筆 / 《渡唐天神像》
    (左から)《騎牛天神像》 / 《天神・文殊像》
    重要美術品《北野天神縁起絵巻》
    (左上から)《束帯天神像》鈴木春信 / 《梅を一生辰のとし神木の木性》菊川英山
    (左から)《松王丸 梅王丸》三代歌川豊国 / 《かんせうぜう尾上菊五郎 八重沢村田之助》歌川豊国
    (左上から)《江都名所 湯しま天神社》歌川広重 / 《亀戸の藤》歌川国安 / 《東京名所真景之内 睦月 亀戸臥竜梅》小林清親
    江ノ島電鉄の経営などに関わった実業家・菅原通済(1894-1981)が創設した常盤山文庫。菅原道真の37代目の子孫を自称していた通済は、天神関連の資料を祖父の代から収集しており、現在では常盤山文庫コレクションの柱の一つとして数えられています。

    本展では常盤山文庫の所蔵品から、天神関連の軸物や版画など全111点を紹介する企画展(会期中通じて)。実在した平安時代の貴族が、どのようにして神様として広まっていったのか、その諸相を展観します。


    地下の展示室は肉筆画中心

    当時の貴族の正装である束帯姿の菅原道真を描いた「束帯天神」は、中世から近世にかけて多くの絵師らが表現してきました。会場でも酒井抱一、鈴木其一らの著名の絵師の作品も紹介されます。

    一般的な「束帯天神」は、憤怒の表情。無実の罪で太宰府に左遷となった恨みから、目は吊り上がり、下唇を噛みしめています。上下から押さえつけるように笏(しゃく)を持っているのも、怒りを堪えているポーズです。

    天神さまが中国に行き、禅の名僧・無準師範(ぶしゅんしばん)から袈裟を授かったという「渡唐天神」の伝説。両者は200年以上時代が異なりますが、渡唐天神像も多くの絵画になりました。中国風の服装に履(くつ)を履き、肩には無準から授かった袈裟が入った袋。今では馴染みは薄いですが、江戸時代までは誰でも知っているポピュラーな画題でした。


    「束帯天神」と「渡唐天神」

    道真の波乱の人生と、天神になった後の逸話や伝説をあわせて描いたのが《北野天神縁起絵巻》です。

    11歳で漢詩を詠む天才だった菅原道真。天皇の信任を得て55歳で右大臣まで上り詰めますが、左大臣の藤原時平と対立。時平の讒言によって大宰権帥(だざいごんのそつ)に左遷となり、失意のうちに2年後に没しました。

    絵巻は12月29日までの前期で1巻、2015年1月4日~1月25日の後期で2・3巻を展示。寵愛していた邸内の紅梅に、有名な「東風吹かば匂い興せよ梅の花…」という別離の歌を詠む場面が描かれています。この梅の木は後に道真を慕って太宰府に飛来したという「飛梅伝説」の由来となるものです。


    《北野天神縁起絵巻》

    2階では浮世絵を紹介。版画が発達すると天神さまはさら広まり、浮世絵の黎明期から明治時代に至るまで、多くの絵師が天神さまや道真を主題にした作品を手掛けています。

    江戸時代の娯楽の花形だった芝居においても、「菅原伝授手習鑑」は義太夫三大名作のひとつ。著名な役者が演じた名シーンを描いた浮世絵も大量に作られました。

    江戸という地域においても、天神さまを祀っている亀戸天満宮と湯島天満宮は参詣・行楽の名所でもありました。天神信仰を背景に多くの人が訪れた両天満宮の姿を広重や三代豊国、小林清親らが美しい名所絵で描いています。


    浮世絵に描かれた天神さま

    蛇足ですが、道真は太宰府に「流された」とよくいわれますが、これは不正確。かなり位が下がったとはいえ、ちゃんと任官しているので「左遷」のほうが正しい表現です。

    学問の神様に囲まれることになる会場。美術館を出る時は、心なしか聡明になっているかも?
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年12月8日 ]

    ※会期中展示替えがあります

    応天の門 1応天の門 1

    灰原 薬 (著)

    新潮社
    ¥ 626

     
    会場
    会期
    2014年12月9日(火)~2015年1月25日(日)
    会期終了
    開館時間
    特別展期間中:午前10時~午後6時(金曜のみ午後8時まで)
    公募展・小中学生絵画展・サロン展期間中:午前9時~午後5時
    最終入館はいずれも閉館30分前までです。
    休館日
    月曜日休館 ただし1月12日(月祝)は開館、1月13日(火)は休館、12月29日(月)~1月3日(土)は展示替え期間で休館
    住所
    東京都渋谷区松濤2-14-14
    電話 03-3465-9421
    公式サイト http://shoto-museum.jp/
    料金
    一般 500(400)円/大学生 400(320)円/高校生 250(200)円/小中学生 100(80)円/65歳以上 250(200)円
    ※()内は10名以上の団体割引料金
    ※小中学生は土日曜日および休祝日は入館無料
    ※毎週金曜日は渋谷区民入館無料
    ※障害者および付添いの方1名は入館無料
    展覧会詳細 天神万華鏡 ~常盤山文庫所蔵 天神コレクションより~ 詳細情報
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