東京での京焼の展覧会は、先日まで
出光美術館で開催されていた「
仁清・乾山と京の工芸 ─ 風雅のうつわ」に続いてとなりますが、実はこれはかなり稀な出来事。そもそも京焼の展覧会の数が多く無い事に加え、京焼陶工の個人名を冠した展覧会に限ると、仁清・乾山の他では真葛焼の宮川香山の名があがる程度でした。
仁阿弥道八は、現在でも関西の茶席では「仁阿弥」と呼ばれるなど人気を博していますが、これまで仁阿弥の作品がまとまって公開される機会は、意外にも少なかったといいます。会場にはボストン美術館からの里帰りも含めて、184件の作品が並びます。
会場入口から仁阿弥道八は京焼の陶工・初代高橋道八の次男。自身は二代高橋道八ですが「仁阿弥」と号しました。
仁阿弥の陶業は、半世紀にも渡ります。高級な茶道具の「写し」(茶道具の需要が高まっていたこの時代、写しの技量は陶工に求められる重要な能力でした)、文人の間で流行した煎茶の道具、華やかな懐石道具の鉢など、数多くの作品を手掛けています。
会場仁阿弥の作品でとりわけ目を引くのが、彫塑的な作品の数々。置物、手焙(てあぶり:中に炭を入れて暖をとるための容れ物)、炉蓋(ろぶた:茶室の炉を覆う蓋)などで、極めてユーモラスな作品を多く残しています。
展覧会メインビジュアルになっている寿老人は《色絵寿星立像》。高さ72.5センチという大型の像で、仁阿弥が手掛けた多くの寿老人像の中でも最大級の作品と思われます。生き生きとした作風は、冷静な観察眼を持つ「写し」の名工と同一人物と思えないほどです。
第5章「彫塑的作品 置物・手焙・炉蓋」仁阿弥は自らの窯を操業する一方で、御庭焼(おにわやき:地方の藩主などが城内で焼かせた陶磁器)の指導も行いました。紀州では「紀州偕楽園焼」に参画し、讃岐高松藩では「讃窯(さんがま)」を創始。会場には御庭焼の指導者としての仁阿弥の作品も紹介されています。
第6章「御庭焼の指導者として」エデュケーション・プログラムとして記念講演会(2/1)、ワークショップ(親子向けと一般向け、ともに2/15)も開催されます。いずれも事前予約制、詳しくは
公式サイトでご確認ください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2014年12月19日 ]