絵画の世界では伝統的に描かれてきた花や鳥。本展では3章構成で、菱田春草、速水御舟、竹内栖鳳、上村松篁らの作品をはじめ、花と鳥を題材にした名品をご紹介していきます。
会場入口から第1章は「花と鳥の競演」。中国から伝来した花鳥画は、桃山から江戸時代にかけて大画面で華やかな作品が数多く制作され、近年でも多様な手法で表現されています。
動画でご紹介する2点は順に、瀧和亭の《五客図》(ごかくず)と、岸連山の《花鳥図》。もに中国・宋時代の宰相、李昉(りほう)が飼った5種の鳥に由来する「五客」が描かれています。
五客は鶴・孔雀・鸚鵡(おうむ)・白鷴(はっかん)・白鷺(しらさぎ)。李昉はそれぞれ仙客・南客・隴(ろう)客・閑客・雪客と名付け、絵に描かせました。
両作品に描かれているのは同じ鳥ですが、表現はそれぞれが個性的。比べてお楽しみいただけます。
第1章「花と鳥の競演」第2章は「花の世界」。四季折々の花卉100種を描いた艶やかな図巻は、田能村直入による《百花》です。植物図巻のような作品で、緻密な描写が特徴的です。
田能村竹田の弟子で、養嗣子となった直入。京都府画学校の設立に尽力し、開校後は初代の摂理(校長)になりました。
第2章「花の世界」第3章は「鳥の世界」。竹内栖鳳や橋本関雪ら戦前に活躍した大家の作品も並びますが、ここでは現役の小山硬の《海鵜》をご紹介。豪快に波しぶきが上がる岩場の海鵜を、生き生きと描いた作品。青・白・黒のコントラストが印象的です。
小山硬は愛知県立芸術大学名誉教授で、日本美術院監事。キリシタンを題材にした「天草シリーズ」などでも知られています。
第3章「鳥の世界」春を迎えるこの季節に相応しい華やかな展覧会。
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[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年2月17日 ] | | 日本美術史
山下裕二 (監修), 高岸輝 (監修) 美術出版社 ¥ 2,940 |