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    レポート
    救いとやすらぎのほとけ ─ 菩薩
    根津美術館 | 東京都
    観音、普賢、文殊、地蔵…庶民を救うほとけの姿
    菩提薩埵(ぼだいさった)の略称である菩薩(ぼさつ)。人間の苦楽に向き合い、救済の手を差しのべる菩薩は、古来さまざまな姿で表現されてきました。飛鳥時代から江戸時代までの菩薩の諸相を、根津美術館の館蔵品を中心に紹介する企画展です。
    (左から)《地蔵菩薩坐像》鎌倉時代 13世紀 / 《地蔵菩薩立像》鎌倉時代 13世紀 / 《菩薩立像》平安時代 11−12世紀 / 《観音菩薩立像》飛鳥時代 7世紀
    (左から)《観音菩薩立像》奈良時代 8世紀 / 《観音菩薩立像》飛鳥時代 7世紀
    (左から)《普賢延命菩薩像》室町時代 16世紀 / 《普賢十羅刹女像》鎌倉時代 13世紀 / 重要文化財《普賢十羅刹女像》平安時代 12世紀
    (左から)《稚児文殊像》室町時代 15世紀 / 《文殊菩薩像》南北朝時代 14世紀
    (右手前)《二十五菩薩来迎図 (厨子扉絵)》室町時代 16世紀
    重要美術品《矢田地蔵縁起絵巻》室町時代 16世紀
    「さまざまな菩薩」
    (左から)《縄衣文殊像》江戸時代 17世紀 / 《岩上観音図》甫雪等禅筆 室町時代 15−16世紀
    《春日若宮大般若経》浄阿筆 鎌倉時代 寛喜元年(1229)~仁治3年(1242)銘/ 《春日厨子》鎌倉時代 寛元元年および3年(1243・45)銘
    サンスクリットのbodhisattva(ボーディ・サットヴァ)の音写「菩提薩埵」に由来する菩薩。もとは「悟り+生けるもの」の意味です。他者にも悟りを導く存在としての菩薩は1世紀頃から広く信仰されるようになり、仏教の飛躍的な拡大につながりました。

    本展は飛鳥時代から江戸時代まで、菩薩を表した彫刻や絵画を紹介する企画。如来や明王だけの作品はNGと厳しい縛りですが、充実した仏教美術コレクションを誇る根津美術館ならではといえます。


    会場入口から第1展示室と、第2展示室

    さまざまな種類がある菩薩。文殊菩薩と普賢菩薩は釈迦如来の両脇に控えるポピュラーな菩薩です。普賢は白象に、文殊は獅子に乗った姿でよく表されます。

    地獄に堕ちた者まで救ってくれるのが、地蔵菩薩。平安時代の後期以降、身近なほとけとして信仰を集めてきました。

    地蔵は物語絵にも登場します。紹介されている《矢田地蔵縁起絵巻》では、恐ろしい地獄絵とともに「毎月決まった日に矢田寺に参詣すると、地獄の責め苦から逃れられる」と説いています。


    菩薩の諸相 普賢菩薩、文殊菩薩、地蔵菩薩

    展示室1の奥には、見ごたえがある大きな木彫の仏像が4軀。右から飛鳥時代、平安時代、鎌倉時代が2軀と、時代順の並びです。

    その表現は、時代ごとに特徴が見られます。飛鳥時代は痩身の童子の姿、平安時代は浅い衣文(えもん)で穏やかな顔立ち、鎌倉時代は表情が引き締まり、衣の表現もダイナミックになってきます。


    飛鳥時代、平安時代、鎌倉時代の菩薩像が並びます

    本展の開幕にあわせ、テーマ展である展示室3が久しぶりに展示替えされました。一人の尼僧が750年以上前に書いた全600巻の大般若経で、根津美術館はうち541巻を所有しています。

    14年の歳月を費やして600巻を書写したのは、尼僧の浄阿(じょうあ)。各巻には書写日が記され、巻末には回向者の名前も列記。経巻を収めた厨子の屋根板にも、転読の費用として寄進された庄田の詳細も記されています。

    2年に及ぶ厨子の修繕が終わり、ようやく公開。美術的な価値はもちろん、民俗学や女性史研究においても貴重な資料として注目を集めそうです。


    展示室3の《春日若宮大般若経》と《春日厨子》

    取材前日には、来日したばかりのドイツ・メルケル首相も本展を訪問しました。メルケル首相を安倍首相が自ら案内。あいにくの天気でしたが庭園にも足を運び、日本が誇る伝統文化を楽しまれたそうです。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年3月10日 ]

    TOKYO美術館2015-2016TOKYO美術館2015-2016

     

    エイ出版社
    ¥ 999


    ■根津美術館 菩薩 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年3月7日(土)~4月6日(月)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    月曜日 ただし4月6日(月)は開館
    住所
    東京都港区南青山6-5-1
    電話 03-3400-2536
    公式サイト http://www.nezu-muse.or.jp/
    料金
    一般1000円、学生[高校生以上]800円
    *中学生以下は無料
    展覧会詳細 救いとやすらぎのほとけ ─ 菩薩 詳細情報
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