1978年、日本専売公社(現・日本たばこ産業株式会社)によって、渋谷区公園通りに開館した「たばこと塩の博物館」。専売品であった「たばこ」と「塩」の歴史と文化に関するテーマを中心に紹介し、35年に渡って多くの人に愛されてきました。
ただ、長期にわたる活動で収集した資料の収蔵スペースが逼迫。常設展示室の面積も不足してきたため、移転リニューアルされる事になりました。渋谷の旧館は2013年秋に閉館、工事による長期休館を経て、いよいよ東京スカイツリー近くの墨田区にリニューアルオープンを果たしました。
立地は東京スカイツリーの近く。渋谷にもあったシンボルモニュメントは、入口でお客様をお迎えします。早速、館内をご案内しましょう。1階はエントランスホールやミュージアムショップ、ワークショップルームなど。5階に多目的スペース、4階に図書閲覧室が設けられ、3階と2階でそれぞれ「たばこ」と「塩」が解説されます。
3階の常設展示室は「たばこの歴史と文化」。アメリカ大陸で誕生し、世界中に広まっていったたばこを「たばこ文化の発生と伝播」「世界のたばこ文化」「江戸時代のたばこ文化」「近現代のたばこ文化」の4つのコーナーで紹介します。
展示室入口は、メキシコ・パレンケ遺跡「十字の神殿」の一部を現地職人が再現したコーナーから。右側の「たばこを吸う神」は、たばこの資料としては最古のものになります。
地域によって特徴がある世界の喫煙具や、江戸時代の本所(現在の墨田区)界隈のたばこ屋さんの再現など、展示物はバラエティ豊か。明治から現代までの日本のたばこが並ぶ「メディアウォール」はパネルに触ると時代背景やエピソードが現れ、懐かしの広告も見ることができます。
3階「たばこの歴史と文化」2階の常設展示室は「塩の世界」。こちらは「生命をささえる塩」を導入に「世界の塩資源」「日本の塩づくり」「塩のサイエンス」の3コーナーで、人や動物が生きていく上で欠かせない塩について解説されます。
奥に進むと、岩塩でできた彫刻も展示されています。ポーランド・ヴィエリチカ岩塩坑(世界遺産)で坑夫たちに信仰されている「聖キンガ像」で、特別許可を得てヴィエリチカの岩塩を用いて現地の職人が制作しました。ちなみに土台や床も、すべて岩塩でできています。
海水を煮詰めて塩をつくるのが、日本の塩づくりの特徴。展示室には、能登半島で約50年にわたって実際に使われていた「釜屋」も移築・再現されました。
楽しい展示が「塩のサイエンス」の装置。塩が入っている容器を台に置くと、塩の原料や産地、製法、種類などが表示されます。置いた容器をダイヤルのように回す事でいろいろな情報が現れますので、試してみてください。
2階「塩の世界」今回のリニューアルで、常設展示室や特別展示室は約2倍に。前にも増して充実の内容になりましたが、入館料は大人・大学生が100円、小・中・高校生が50円と極めてリーズナブルです。
今後は特別展や講演会・講座・映画上映会などのイベントも開催されるとの事。期待したいと思います。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年4月24日 ]■たばこと塩の博物館 に関するツイート