IM
    レポート
    ヘレン・シャルフベック ─ 魂のまなざし
    東京藝術大学大学美術館 | 東京都
    フィンランドの国民的女性画家
    19世紀末から20世紀初めに活躍したフィンランドを代表する女性画家、ヘレン・シャルフベック(1862−1946)。2012年に生誕150周年を記念した大回顧展がヘルシンキで開かれ、近年は世界的にも注目を集めています。日本では初めてとなる大規模展、初期から晩年まで84点が並びます。
    《快復期》Ateneum Art Museum, Finnish National Gallery
    (右)《子供を抱く女性》
    (左)《堅信式の前》
    (左から)《お針子(働く女性)》《家にて(裁縫をする母)》
    (左)《自画像》
    (右)《黒い背景の自画像》
    (右)《未完成の自画像(裏)》
    (右)《パン屋》
    (右)《パレットを持つ自画像Ⅱ》

    フィンランドで最も愛されている芸術家のひとり、シャルフベック。3歳の時の事故で左足が不自由になり学校に通えず、自宅で家庭教師に学びました。そして、彼女の才能にいち早く気づいたのも、この家庭教師でした。


    11歳で素描学校への入学が許され、奨学金を得て18歳でパリへ。最先端の美術に触れる事で、芸術家として大きく飛躍していきます。


    北欧の清潔感をイメージし、会場はあえて白い壁のシンプルな構成です


    シャルフベックが脚光を浴びるきっかけとなったのが、展覧会のメインビジュアルでもある《快復期》。快復の兆しを示している病気の幼い少女を描いた、1888年の作品です。


    パリのサロンで高い評価を受けたこの作品はフィンランド芸術協会に買い上げられ、翌年のパリ万博では銅メダルを獲得。シャルフベックは20代にして、国際的な名声を得たのです。


    ただ、プライベートでは、3年前に婚約を破棄されるという不幸があったシャルフベック。快復する少女の姿に、自らの境遇を重ね合わせているという解釈もあります。


    ヘレン・シャルフベック《快復期》


    多くの肖像画を描いたシャルフベック。特に自画像は、生涯にわたって描き続けました。


    10代でも達者な素描の自画像を描いていますが、パリに渡ると流行のスタイルを吸収。印象派風の自画像も出展されています。


    1914年、フィンランド芸術協会は自国の美術界を代表する9人を選出。シャルフベックは、女性としてただ一人選ばれました。


    理事会室に飾る自画像を依頼されたシャルフベックは、黒い背景に自らの名前を擦れた文字で記した自画像を制作。まだ50代半ばでしたが、自らの墓石とみなして描いた作品です。


    第3章「肖像画と自画像」


    病気がちだったシャルフベックは、療養もかねてヘルシンキ近郊で閉じこもるように生活しましたが、制作意欲は衰えませんでした。


    母親を亡くして独り身になった後は、画商の薦めもあり、自分の初期作を再解釈した作品を制作。


    また、再評価が進みつつあったスペインの巨匠エル・グレコから刺激を受け、エル・グレコの作品をキュビスム風に描いた作品も描いています。


    第4章「自作の再解釈とエル・グレコの発見」


    晩年になると、自画像には死のイメージが強くなります。衰えてゆく自らを美化せずに描いた作品は、直視するのが辛く感じるほどです。


    50代で19歳年下の画家に恋愛感情を抱きますが、これも成就しなかったシャルフベック。1946年にホテルの一室で死去。83歳、生涯独身でした。


    展覧会は全国巡回。東京展の後は仙台(宮城県美術館:8/6~10/12)、広島(奥田元宋・小由女美術館:10/30~2016年 1/3)、葉山(神奈川県立近代美術館 葉山:2016年 1/10~3/27)と続きます。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年6月1日 ]


    ヘレン・シャルフベック 魂のまなざしヘレン・シャルフベック 魂のまなざし

    佐藤直樹 (監修)

    求龍堂
    ¥ 2,300

    料金一般当日:1,500円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon


    ■ヘレン・シャルフベック に関するツイート


    会場
    会期
    2015年6月2日(火)~7月26日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は午後16:30まで)
    休館日
    月曜日休館 ただし7月20日は開館、21日休館
    住所
    東京都台東区上野公園12-8
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://helene-fin.exhn.jp/
    料金
    一般 1,500(1,300/1,200)円/高校・大学生 1,000(800/700)円
    ※()内は前売/20名以上の団体料金
    展覧会詳細 ヘレン・シャルフベック ─ 魂のまなざし 詳細情報
    おすすめレポート
    学芸員募集
    大阪府立博物館 学芸員募集(考古・古代史) [大阪府立近つ飛鳥博物館 又は 大阪府立弥生文化博物館]
    大阪府
    【公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団】学芸員募集 [ポーラ伝統文化振興財団(品川区西五反田)141-0031 東京都品川区西五反田2-2-10 ポーラ五反田第二ビル]
    東京都
    丸沼芸術の森 運営スタッフ募集中! [丸沼芸術の森]
    埼玉県
    八尾市歴史民俗資料館 学芸員募集中! [八尾市歴史民俗資料館での学芸員職]
    大阪府
    観峰館 学芸員募集中! [観峰館]
    滋賀県
    展覧会ランキング
    1
    東京ドームシティ Gallery AaMo(ギャラリー アーモ) | 東京都
    逆境回顧録 大カイジ展
    開催中[あと44日]
    2024年3月16日(土)〜5月12日(日)
    2
    SOMPO美術館 | 東京都
    北欧の神秘 ― ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画
    開催中[あと72日]
    2024年3月23日(土)〜6月9日(日)
    3
    東京都美術館 | 東京都
    印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年1月27日(土)〜4月7日(日)
    4
    東京国立近代美術館 | 東京都
    美術館の春まつり
    もうすぐ終了[あと9日]
    2024年3月15日(金)〜4月7日(日)
    5
    国立科学博物館 | 東京都
    特別展「大哺乳類展3-わけてつなげて大行進」
    開催中[あと79日]
    2024年3月16日(土)〜6月16日(日)