カネゴンやウルトラ兄弟が出迎えてくれる楽しいエントランス(このエリアは撮影可能です)。第1部「ウルトラ伝説の始まり」から会場はスタートします。
「ゴジラ」(1954年、東宝)で世界を驚かせた「特撮の神様」こと円谷英二が、TBSと進めたSF特撮シリーズ「UNBALANCE」。各話で不可思議な事件を描く構想で撮影が始まりましたが、途中から怪獣路線に変更。タイトルも「ウルトラQ」に改題されました。
「ウルトラQ」のヒットを受けて制作されたのが「ウルトラマン」。怪獣と互角に戦う正義の味方として生み出された、全く新しいスタイルのヒーローでした。続編の「ウルトラセブン」はさらにSF色を強化。大人も満足させる骨太のドラマが描かれました。
第1部「ウルトラ伝説の始まり」第2部は「光の国を作った人々」、ウルトラマンシリーズに関わったクリエイター達が紹介されます。
シュルレアリスム画家だった高山良策は、数多くの怪獣着ぐるみを制作。仏像修復などに関わっていた彫刻家の佐々木明は、ウルトラマン、飛行人形、各種プロップなどの立体造形を担当。池谷仙克は怪獣のデザインや美術で活躍しました。
手本がどこにも存在しなかった、ウルトラマンの世界。クリエイターたちは想像力を駆使して、未知の世界を切り開いていきました。
第2部「光の国を作った人々」第3部は「ウルトラ兄弟の誕生」。ウルトラセブンの終了から2年半。再放送が人気を呼び、新番組として「帰ってきたウルトラマン」が始まります。その翌年から立て続けに「ウルトラマンA」「ウルトラマンタロウ」「ウルトラマンレオ」と放映。5年のブランクの後に「ウルトラマン80」が制作されました。
シリーズ化が進む中で、ウルトラマンの故郷である「M78星雲 光の国」や、「ウルトラの父」や「ウルトラの母」、そして「ウルトラ兄弟」というファミリーの概念も確立。それぞれの時代に沿った世界観を導入しながら、新たなファン層にアプローチしていきました。
ウルトラマンシリーズは初期のインパクトが強い事もあって、この時期の作品は見逃されがちですが、再放送での視聴者も多く、この展示も初期作品と同様に人気を呼びそうです。
第3部「ウルトラ兄弟の誕生」第4部は「ぼくらのヒーローウルトラマン」。ウルトラマンが子どもたちに支持された要因として、ソフビ人形や怪獣図鑑、雑誌などの影響は外せません。
一般の家庭にはVTRも無かった時代。雑誌や玩具などの別媒体によって、ウルトラマンのイメージは広く定着していったのです。
会場では若きクリエーターが手掛けたプラモの箱絵や雑誌グラビアなどを紹介。テレビとは造形の細部が違う作品も見られ、描き手ごとの得意分野もよく分かります。
第4部「ぼくらのヒーローウルトラマン」ちなみに、会場途中にはちょっと怖い演出も。動線に沿って進むと、死角となる場所に何の案内も無くケムール人が立っています。
背後から光が差し込んで、逆光の中に直立するケムール人。気が弱い方は、お気を付けください。
壁の向こうに進むと…展覧会は全国巡回。2012年の新潟を皮切りに群馬、広島、愛知、北海道、滋賀、静岡、福岡とまわって
横須賀美術館が最終会場となります。期間は夏休みいっぱい、お子さんと一緒にお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年6月29日 ]©円谷プロ