ロバート・ハインデルはアメリカ・オハイオ州出身。躍動的なダンサーを描いた絵画は、ダイアナ元妃や高円宮殿下などにも愛されました。
展覧会は初期から晩年まで100点余りの作品で、その画業を振り返る企画。最初は日本初公開のイラストレーションからです。
ハインデルはファイン・アーティストになる前にはイラストの分野で活躍していました。「タイム」誌や「スポーツ・イラストレイテッド」誌などを手掛けていたハインデルは「ドローイングは正直でごまかしがきかない」と言いますが、その描線は自信に満ち溢れています。
イラストレーションハインデルがバレエと関わりを持ったのは、ちょっとした偶然でした。
1962年に、当時働いていたデザイン事務所の上司から「クライアントが行けなくなったから」という理由でバレエのチケットを入手。「テクニックをはるかに超えるオーラ」を見出したハインデルは、たちまちバレエの虜になりました。
世界中の著名なバレエ団の公演前リハーサルを取材したハインデル。真摯にレッスンに打ち込むダンサーの姿を目に焼き付けて、自らの作品としていきました。
ハインデルは、華やかな舞台の上のダンサーは殆ど描きませんでした。重圧の中で苦しみながらも、肉体の限界まで表現を追求するダンサー。その内面まで深く切り込むような描写で、ダンサーの本質に近づいていきます。
華やかだけでは無い、ダンサーの本質に迫ります会場半ばからは、日本と関わりのある作品も紹介されています。
ハインデル作品のコレクターのひとりが、高円宮憲仁親王。高円宮は日本のバレエやコンテンポラリー・ダンスに明るく、1988年の第3回青山バレエ・フェスティバルでハインデルを知り、93年の展覧会ではじめて作品を観覧されました。
高円宮の案内により、ハインデルは日本のダンサーも取材。森下洋子、佐々木想美、草刈民代、下村由利恵、吉田都、熊川哲也、白川直子、平山素子らを描いています。
日本のダンサーを描いた作品群西洋の舞台芸術であるバレエだけではなく、東洋の舞台芸術にも興味を持っていたハインデル。1993年の来日時に能舞台の稽古を取材。歌舞伎ついては94年に高円宮から講義を受け、96年には歌舞伎座で観劇。同時に講演前の取材も行っています。
「時間を超越した声と演技」に感動したというハインデルは、能と歌舞伎を題材にした作品を20点ずつ描いています。
能と歌舞伎を題材にした作品展覧会ではトゥシューズのモチーフを美術館受付で提示すればポストカードをプレゼントするドレスコード特典も実施中。アクセサリーはもちろん、本物のトゥシューズでも可です(※景品が無くなり次第終了となります)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年7月3日 ]作品は全て © Robert Heindel