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    レポート
    生誕130年記念 前田青邨と日本美術院 ―大観・古径・御舟―
    山種美術館 | 東京都
    21年ぶり、13作品が勢揃い
    今年生誕130周年を迎える前田青邨(まえだ せいそん 1885-1977)は、大正から昭和まで長きにわたって活躍した日本画家です。夏の山種美術館は青邨を中心に、日本美術院で活動した画家たちを取り上げます。
    前田青邨《腑分》 山種美術館 ©Y.MAEDA&JASPAR,Tokyo,2015 E1544
    (左から)橋本雅邦《日本武尊像》 / 橋本雅邦《岩上遊鷹》ともに山種美術館
    横山大観《燕山の巻》 山種美術館
    下村観山《老松白藤》 山種美術館
    (左から)小林古径《弥勒》 / 小林古径《闘草》 ともに山種美術館
    (左から)奥村土牛《雨趣》 / 奥村土牛《城》 ともに山種美術館
    (左から)速水御舟《埃及土人ノ潅漑》 / 速水御舟《天仙果》 ともに山種美術館
    守屋多々志《聴花(式子内親王)》 山種美術館
    重要文化財 速水御舟《炎舞》 山種美術館
    展覧会は橋本雅邦(1835-1908)や、横山大観(1868-1958)、下村観山(1873-1930)、菱田春草(1874-1911)、木村武山(1876-1942)などの日本美術院創設メンバーからはじまります。大観や観山の世代は青邨よりも10~20歳ほど年上。世代が1つ2つ上の大先輩たちです。


    第1章 日本美術院の開拓者たち

    中でも青邨は観山を深く敬愛し、青邨が結婚する際に観山が色々と力添えするなど、深い縁がありました。観山の死の折には、青邨は真っ先に駆けつけ、そのデスマスクを制作しています。

    展示されている観山の《不動明王》は、観山が海外留学中の1904年頃の作品。不動明王の肉体表現は鋭い陰影がつけられ、西洋絵画の影響を感じられます。海外で展示されたこともあって、左下にはアルファベットの署名付き。ぜひ会場でご確認ください。


    下村観山《不動明王》山種美術館

    青邨は挿絵画家としても活躍していた梶田半古(1870-1917)の門下に入ります。半古の画塾では小林古径(1883-1957)と出会い、2人は生涯切磋琢磨しあう友人に。他にも安田靫彦(1884-1978)、奥村土牛(1889-1990)、小茂田青樹(1891-1933)、速水御舟(1894-1935)らとともに、日本美術院の第二世代として画壇で活躍しました。

    『大物浦』は青邨83歳の作品。兄である源頼朝の不興を買い、追われる身となった義経が、大物浦で嵐に巻き込まれる姿です。ダイナミックな荒れる波と人々の衣装の表現には垂らし込みの技法が使われています。一人一人の表情まで細かく描きこまれた大作です。


    前田青邨《大物浦》山種美術館 ©Y.MAEDA&JASPAR,Tokyo,2015 E1544

    青邨は長い画業の中で、守屋多々志(1912-2003)や平山郁夫(1930-2009)など、多くの弟子を育てました。

    守屋多々志は、青邨の死去の翌年、《平家厳島納経》を制作。厳島神社に向かう平家一門を描いた作品で、人物一人一人の表情まで丁寧に描かれています。守屋はこの作品を「師への手向けの気持ちを込めて描いた」、と語っています。


    守屋多々志《平家厳島納経》山種美術館

    第2展示室では、青邨も参加していた若手画家たちの研究会「紅児会」の仲間たちの作品が紹介されます。今回約2年ぶりの展示となる速水御舟の名作、重要文化財『炎舞』はここで展示されています。3か月にわたり軽井沢で研究を重ねて描いた炎や背景の闇の奥深さ、炎に戯れる精緻な蛾の描写をゆっくりとご堪能ください。


    重要文化財 速水御舟《炎舞》山種美術館

    今回は山種美術館所蔵の青邨作品13点が21年ぶりの一挙展示。そして、大観、春草、古径、靫彦、御舟から守屋多々志、平山郁夫ら、院展の巨匠の作品など、日本美術の流れを山種美術館の豊富なコレクションで総覧できる絶好の機会です。山種美術館おなじみのきもの・ゆかた割引も実施中。夏は浴衣で日本美術をお楽しみください。
    [ 取材・撮影・文:川田千沙 / 2015年6月29日 ]

    日本美術史 JAPANESE ART HISTORY日本美術史 JAPANESE ART HISTORY

    山下裕二 (監修), 高岸輝 (監修)

    美術出版社
    ¥ 2,940


    ■前田青邨と日本美術院 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年6月27日(土)~8月23日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館16:30まで)
    ※特別展の開館時間は変更になることもあります。
    休館日
    月曜日休館 ただし7月20日は開館、21日休館
    住所
    東京都渋谷区広尾3-12-36
    電話 03-5777-8600 (ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.yamatane-museum.jp/
    料金
    一般 1000円(800円)/大高生 800円(700)円/中学生以下無料
    ※( )内は20名以上の団体料金および前売料金。
    ※障がい者手帳、被爆者手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料。
    展覧会詳細 生誕130年記念 前田青邨と日本美術院 ―大観・古径・御舟― 詳細情報
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