国立科学博物館の地球館は1999年のオープン。「日本列島の自然と私たち」を展示する日本館に対し、地球館は「地球生命史と人類」について紹介しています。
今回は地球館が開館して初の大規模リニューアル。改修は5フロアに及び、地球館の約3分の1が新しくなりました。
まず地球館の入口にあたる1階には、シンボルゾーン「地球史ナビゲーター」が設けられました。宇宙誕生から現在に至るまでの長い歩みを「宇宙史」「生命史」「人間史」の3つの切り口で紹介し、この場所で地球館全体を俯瞰してもらおうという試みです。
奥に通じるエリアの「海上生物の多様性」、1階展示の最後にあたる「生物多様性の保全」も新しくなりました。
1階
科学技術を展示する2階には、数多くの体験型展示が導入されました。アンテナを動かして電波を受けたり、測定器を使って壁の内部を調べたりと、触って楽しめる装置で光や波、電波について理解する事ができます。
2階の導入部分には、人工衛星から観測した地球に関するさまざまの情報(温度、水蒸気量、地磁気の変動など)が、準リアルタイムで更新される「観測ステーション」も設置。スクリーンに手をかざす事で映像を操作するのは、まるで映画「マイノリティー・リポート」のよう。ちょっといい気分を味わえます。
2階
リニューアルの目玉のひとつが、3階の「親と子のたんけんひろば コンパス」。未就学児と保護者を主な対象にした新しいエリアです。
科博の展示内容はかなりハイレベルですが、実は来館者の1割弱は未就学児でした。そのため、親と子のためのフロアが新設されました。小さな子どもでも博物館や自然科学に親しみを持ってもらえるように、ここでは遊びの要素が取り入れられています。
靴を脱いで上がる室内には、大型遊具のような設備とともに動物の剥製や恐竜の化石を配置。トンネルをくぐったり、吊り橋をわたったりと、身体を動かす中で、トドは真上から、ティラノサウルスは真下からと、普通の展示室では見る事ができない角度から観察する事ができます。
こちらは入室整理券による当日予約制。整理券は1階の地球館インフォメーションで受け取れます。
3階
科博の一番人気といえば、やはり恐竜。恐竜を紹介する地下1階も改修されました。この16年で恐竜の研究は大きく進化しており(多くの恐竜に羽毛が生えていた、鳥類は恐竜の子孫だった、など)、展示内容は最新の研究成果を踏まえたものとなりました。
トリケラトプスの前肢の向きも、従来の説とは違っていた事が、国立科学博物館の研究で判明。その成果に基づいて展示された全身復元骨格は、世界初の「脚の向きが正しいトリケラトプス」という事になります。
ティラノサウルスの後ろ側には、階段で登れるエリアもあります。上から眺める恐竜も迫力満点で、人気撮影スポットになりそうです(科博の館内は撮影可能。ただし一脚・三脚・自撮り棒は使用禁止です)。
地下1階
地下3階では、日本の科学研究にフォーカス。まずは湯川秀樹博士を筆頭に、日本の自然科学系のノーベル賞受賞者を一堂に紹介するコーナーを設けました。研究実績だけでなく人物像が分かるような資料も紹介されており、偉大な科学者の素顔を垣間見る事ができます。
高エネルギー加速器研究機構の施設で実際に使用され、ノーベル賞受賞の「小林=益川理論」を実証した加速器と測定器の実機の中心部分も展示。ビタミンを発見した鈴木梅太郎博士など、日本科学の黎明期を支えた先人たちについても紹介されています。
地下3階
この項で紹介したのはリニューアルされた部分だけですので、実際の地球館はさらに倍以上の展示があり、それに加えて日本館まである国立科学博物館。「子どもの頃に郊外学習で行っただけ」という方は、その変容ぶりに驚かれると思います。長めに時間を取って、ゆっくりとお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年6月12日 ]
■国立科学博物館 リニューアル に関するツイート