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    レポート
    琳派 京(みやこ)を彩る
    京都国立博物館 | 京都府
    メモリアルイヤーを締めくくる豪華展
    各地で開催されている「琳派400年」展の決定版が、京都国立博物館でいよいよ始まりました。国宝6件、重要文化財36件を含む琳派の名品がずらり、宗達・光琳・抱一の三者が描いた「風神雷神図屏風」もそろい踏みします。
    国宝《風神雷神図屏風》 俵屋宗達筆 京都・建仁寺
    (左)重要美術品《光徳刀絵図》 石川県立美術館 / (右)重要文化財《薙刀直シ刀 無銘(名物 骨喰藤四郎)》 京都・豊国神社
    重要美術品《光徳刀絵図》 石川県立美術館
    重要文化財《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》 本阿弥光悦筆・俵屋宗達画 京都国立博物館
    (左から)重要文化財《牛図》 俵屋宗達筆・烏丸光広賛 京都・頂妙寺 / 国宝《蓮池水禽図》 俵屋宗達筆 京都国立博物館
    (左奥)重要文化財《秋草図屛風》 俵屋宗雪筆 東京国立博物館 / (右奥)《芥子図屛風》 京都国立博物館 / (中央手前)重要文化財《色絵芥子文茶壺》 野々村仁清作 東京・出光美術館
    (左から)《三十六歌仙図屛風》 酒井抱一筆 米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション / 重要美術品《三十六歌仙図屛風》 尾形光琳筆 愛知・メナード美術館
    《槇鹿蒔絵螺鈿料紙・硯箱》 永田友治作 京都国立博物館(奥村重兵衛氏寄贈)
    《八橋図屛風》 酒井抱一筆 東京・出光美術館
    いつもは特別展覧会が開催される明治古都館が休館中のため、平成知新館で開催される本展。彫刻がある1階の展示室以外、全ての展示室を用いての大琳派展です。

    「京都・鷹峯に本阿弥光悦が芸術村を作り…」は、各地で開かれている琳派400年展で必ず解説される決め言葉。それを実際に示した資料《光悦町古図写》が、本展の冒頭で展示されています。

    T字に伸びる通りの両側に、56軒の屋敷。光悦の一族や、親交があった町衆の名前も記されています。


    《光悦町古図写》

    俵屋宗達が下絵を、光悦が和歌を書いた合作はいくつも知られていますが、重要文化財《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》は極めて華麗な逸品です。かつてこの作品を入手した荒川豊蔵(人間国宝の陶芸家)は、箱の蓋裏に「天恵」と書くほど喜びました。

    水辺で羽を休める鶴は、舞い上がり、群れになって海の上を飛び、そして降下してと、アニメーションのような描写。光悦の書も抑揚が効いており、まるで音楽を奏でるようなリズム感があります。

    全長13.56メートルという長い巻物ですが、嬉しい事に会期中通じて全編が公開されます。端からゆっくりと、お楽しみください。


    重要文化財《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》 本阿弥光悦筆・俵屋宗達画

    「琳派におけるかたちの継承」といえば、誰でも風神雷神図が頭に浮かびますが、本展ではもうひとつ。光琳と抱一による《三十六歌仙図屛風》が並んで紹介されています。

    二曲一隻の小ぶりな屏風に描かれた、藤原公任『三十六人撰』に基づく歌人たち。向かって右はメナード美術館が所蔵する光琳版、左の抱一版は米国のプライスコレクションです。

    抱一版の方が発色が良く華やかな印象ですが、構図も表情もまるっきり同じ。印まで全く同じ場所に押されています。


    瓜二つの《三十六歌仙図屛風》の他、光琳の画稿や、鈴木其一による横長の作品も

    展覧会の最大の目玉が《風神雷神図屏風》。17世紀に宗達、18世紀に光琳、19世紀に抱一と、100年ずつ挟んで図像が受け継がれてきました。

    もともと風神雷神は千手観音の眷属ですが、この二神のみを絵画化したのは宗達が初めてです。宗達版と二神がほぼ重なり、敷き写したと思われる光琳版。抱一版は屏風のプロポーションが違い、二神がだいぶ近づいています。同じ展示室で見る事で、それぞれの個性を比べる事ができます。

    なお、会期中通して出展されるのは宗達版だけ。三者がそろうのは10月27日~11月8日となります。ご注意ください。


    《風神雷神図屏風》のそろい踏み。三者が揃わない時に展示される重要文化財《夏秋草図屏風》酒井抱一筆は、光琳版の風神雷神の裏面に描かれていたものです

    ゲームの影響で若い女子に大人気の刀剣。展覧会で《骨喰藤四郎》と《光徳刀絵図》が並ぶのは、今回が初めてです。

    そもそも琳派の祖・光悦を生んだ本阿弥家は、刀剣の研ぎや鑑定が生業です。《光徳刀絵図》は光悦の従兄弟・光徳が作者とされ、この絵図の巻頭に、骨喰藤四郎の全身押形が収録されています。

    現存の骨喰藤四郎は、江戸時代の明暦の大火(振袖火事)で被災。後に修復されたため、刃文と肌は製作当初と異なります。この絵図こそ「戯れに斬る真似をするだけで骨が砕けて死ぬ」と伝わる骨喰藤四郎の真の姿なのです。


    重要美術品《光徳刀絵図》は、近年になって石川県立美術館の所蔵となりました

    今でも京都の町には琳派に繋がる美意識は随所に見られますが、あまりにも身近にあるためか、琳派をテーマにした大規模展が京都で開かれた事はありませんでした。

    「京で生まれた琳派を、琳派を生んだ京で見る」が、展覧会の大きなコンセプト。メモリアルイヤーのとりを飾るに相応しい、豪華な展覧会です。
    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年10月9日 ]

    ※会期中、作品の一部展示替えがあります

    京都 琳派をめぐる旅京都 琳派をめぐる旅

    淡交社編集局 (編集)

    淡交社
    ¥ 1,728

    料金一般当日:1,350円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon


    ■琳派 京(みやこ)を彩る に関するツイート


     
    会場
    会期
    2015年10月10日(土)~11月23日(月)
    会期終了
    開館時間
    9:30~17:00
    (入館は閉館30分前まで)
    ※特別展期間中は延長あり
    休館日
    月曜日 ※月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館
    住所
    京都府京都市東山区茶屋町527
    電話 075-525-2473(テレホンサービス)
    公式サイト http://rinpa.exhn.jp/
    料金
    一般 1,500円(1,300円)/大学生 1,200円(1,000円)/高校生 900円(700円)/中学生以下無料
    *( )内は前売りおよび団体20名以上。
    展覧会詳細 琳派 京(みやこ)を彩る 詳細情報
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