1989年にバース・カレッジで出会ったふたり。1993年から共同で作品を制作し、英国では大きな個展が開かれるなど注目は高まっています。
日本での活動は、2007年に森美術館「MAMプロジェクト」、2012年にICC「オープン・スペース 2012」、そして2014年には「
プライベート・ユートピア ここだけの場所」でも作品を展示。ただ、大規模な個展は今回が初めてとなります。
会場構成はA~Dの4ゾーンで、Aは初期の作品「パフォーマンス」から。1993年に初めて作ったヴィデオ作品が《板》。大きな板を乗り越えたり、滑ったり、支えたり、つぶされたりと、コミカルな動作が淡々と進んでいきます。
Bは「アニメーション」。こちらは人間以外が主役で、テーブル、コピー機、椅子など、身の回りにあるものを用いた映像です。極めて日常的な情景や、予想を裏切る動きなど内容はさまざまですが、どの作品からも独特の空気が感じられます。
A「パフォーマンス」、B「アニメーション」Cは「物語」。2005年までの作品はすべて固定カメラによるワンショット映像ですが、ここは短いショットを繋ぎ合わせてワンカットのように見せた作品です。少しずつ違う内容が繰り返される事で、時間も空間も永遠に続いていくような、不思議な感覚を覚えます。
Dは「映画」、ふたりは映画が大好きで、映画から多くの影響を受けました。ここには、クラシックな映画でよく使われるシーンをモチーフにしたオマージュ作品など。ハシゴの上から何度も落下する《100回の落下》は、分かっているのに見入ってしまう傑作です。
C「物語」、D「映画」彼らの映像作品は、最新鋭の技術とは対極にあるような素朴な手法で作られた作品がほとんど。ただ、その独特の存在感は、他の追随を許しません。ネタバレにならないように本項での映像紹介はサワリだけといたしましたが、この魅力をお伝えできているかどうか自信がありません。現代美術が苦手な方に、特に強くお勧めいたします。
作品を全部見ると、4時間強。ただ嬉しい事に、ICCは500円の入場料で会期中1回に限り再入場が可能です。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2015年11月26日 ]