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    レポート
    ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞
    Bunkamura ザ・ミュージアム | 東京都
    ポップなイメージは、浮世絵の本質
    幕末に活躍した浮世絵師、歌川国芳(1797~1861)と歌川国貞(1786~1864)。初代歌川豊国に師事した同門のふたりは多くのヒット作を世に送り出し、江戸時代の人々を魅了しました。大衆文化である浮世絵を、現代のポップカルチャーになぞらえて紹介する企画展が、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中です。
    (左から)歌川国芳《「通俗水滸伝豪傑百八人之一人短冥次郎阮小吾」》 / 歌川国芳《「通俗水滸伝豪傑百八人之一人浪裡白跳張順」》
    (左から)歌川国貞《「当世三極志」三代目市川市蔵、 四代目中村芝翫、初代河原崎権十郎》 / 歌川国貞《「当世好男子伝」梅「楊志ニ比ス 唐犬権兵衛」三代目嵐吉三郎、「阮小二比ス 團七九郎兵衛」四代目市川小團次、「小三娘比ス 奴ノ小万」三代目岩井粂三郎》
    (左から)歌川国芳《「平家の驕奢悪逆を憎み鞍馬山の僧正坊を始め諸山の八天狗御曹司牛若丸の影身を添ひ源家再興を企る随従の英雄を伏さしむる図」》 / 歌川国芳《「見立東海道五拾三次岡部 猫石の由来」》
    (左から)歌川国貞《「見立三十六歌撰之内 在原業平朝臣 清玄」八代目市川團十郎》 / 歌川国芳《「浅倉当吾亡霊」四代目市川小團次》 / 歌川国芳《「織越大領政知」四代目坂東彦三郎》
    (左から)歌川国芳《「浜名宗清」三代目嵐吉三郎、「桂木」初代坂東しうか、「氏尚」八代目市川團十郎、「紅梅」二代目尾上菊次郎》 / 歌川国芳《詞花紅成盛「法作」四代目中村歌右衛門、「白ゆふ」初代坂東しうか、「阿沙丸」十二代目市村羽左衛門》
    (左から)歌川国芳《「踊形容楽屋之図 踊形容新開入之図」》 / 歌川国芳《「ふき屋町市村座大入あたり振舞楽屋之図」》
    二幕目の六「今様江戸女子姿」(エドガールズ・コレクション)
    (左から)歌川国貞《「東国両国橋川開繁栄図」》 / 歌川国貞《「吾妻橋夕涼景」》
    (左)歌川国芳《「梅の魁」》 / (右上)歌川国芳《「四季遊観 納涼のほたる」》 / (右下)歌川国芳《「当盛 今戸の夜ざしき」》
    現在では美術品として扱われる浮世絵ですが、もともとは大衆の中にあった文化。歌舞伎役者、花魁、歴史上のヒーロー、空想を交えたエンターテイメントなどをわずか「そば1杯」という安価で販売し、庶民に親しまれました。

    会場に入るとイメージカラーは緑とピンク、横文字のルビがふられた章構成と、美術展としては異例のポップなイメージですが、実はこの世界観こそ浮世絵の本質。トレンドを読み、表現力を駆使して、消費者の欲求に応えていった両者の名品が紹介されています。


    会場入口から

    作品は充実した日本美術コレクションで知られる、ボストン美術館の所蔵品。同館は国芳・国貞の浮世絵も14,000枚以上所蔵しており、本展には厳選した名品が来日しました。美術館の規定で、一度貸し出されると5年間は公開できなくなる事も考えると、とても貴重な展覧会といえます。

    色合いも含めて、かなり派手な作品が目につく本展。通常の浮世絵の展覧会は、サイズの関係もあってやや寂しく感じる事もありますが、今回は二枚続・三枚続などの大型作品が多い事もあり、会場全体がかなりの迫力です。


    「一幕目」は、一から五まで

    「ツートップ」として紹介されている国芳と国貞ですが、当時は歌川国貞が断トツの一番人気。豊国門下でも早々と頭角を現し、役者似顔絵が大ヒット。美人画でも人気を博して、歌川一門の大名跡「豊国」を継いでいます。

    逆に国芳は、近年はとても人気を集めていますが、デビュー当時は不遇。水滸伝ブームに乗るかたちで30歳を過ぎた頃から武者絵が評判になり、徐々に頭角を現しました。

    後年に両者は肩を並べ、「東海道五十三次」で知られる歌川広重とともに「豊国にかほ(似顔=人物画) 国芳むしや(武者) 広重めいしよ(名所)」と称されるようになっています。


    「二幕目」は、一から八まで

    会場は「一幕目」と「二幕目」に分かれ、それぞれ5つと8つの小さな章で構成。ここでは二幕目の六「今様江戸女子姿」(エドガールズ・コレクション)をご紹介しましょう。

    役者と遊女を描いた浮世絵が禁令によって出版できなくなると、代わって登場したのが町家の娘を題材にした作品。小粋な持ち物やチャーミングな仕草の女性像は、現代なら「一流カメラマンによる読モ(読者モデル)のスナップ」といえるでしょうか。


    二幕目の六 今様江戸女子姿

    イメージソングはB'z松本孝弘の書き下ろし、公式サイトも凝っており、グッズも充実。会場(Bunkamura ザ・ミュージアム)が渋谷という事も含め、いかにも若い人に刺さりそうな展覧会ですが、春画展なども含めて浮世絵への関心が高まる中、こういったテイストで新たなファンを開拓する試みはとても嬉しく思います。

    東京展は6月5日まで。続いて神戸、名古屋に巡回します(会場と会期の詳細はこちらです

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年3月18日 ]

    歌川国芳 (ちいさな美術館シリーズ)歌川国芳 (ちいさな美術館シリーズ)

    歌川 国芳 (著), 悳 俊彦 (監修)

    青幻舎
    ¥ 1,296

    料金一般当日:1,500円
     → チケットのお求めはお出かけ前にicon


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    会場
    会期
    2016年3月19日(土)~6月5日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00(毎週金・土曜日は21:00迄) ※入館は各閉館の30分前まで
    休館日
    会期中無休
    住所
    東京都渋谷区道玄坂2-24-1 Bunkamura B1F
    電話 03-5777-8600(ハローダイヤル)
    公式サイト http://www.ntv.co.jp/kunikuni/
    料金
    一般 1,500(1,300)円/大学・高校生 1,000(800)円/中学・小学生 700( 500)円
    ※()内は20名以上の団体料金及び前売り料金
    展覧会詳細 ボストン美術館所蔵 俺たちの国芳 わたしの国貞 詳細情報
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