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    レポート
    鏡の魔力 │ 若き日の雪舟
    根津美術館 | 東京都
    中国の古鏡と、「拙」だった画聖
    ふたつの展覧会が開催中の根津美術館。「鏡の魔力」では中国古鏡コレクションから61件の名品を紹介。雪舟が画聖になる前の「若き日の雪舟」では、長らく所在不明となっていた「芦葉達磨図」が公開中です。
    (手前)《星雲文鏡》 根津美術館蔵
    (左から)《団華文鏡》 / 《パルメット文鏡》 ともに根津美術館蔵
    (左から)《貼銀禽獣唐草文八稜鏡》 / 《貼金緑松石象嵌花唐草文鏡》 ともに根津美術館蔵
    (右手前)《神仙騎馬画像鏡》 根津美術館蔵
    (左から)《芦葉達磨図模本》林教屑筆 東京国立博物館蔵 / 《芦葉達磨図》拙宗等揚筆 竺心慶仙賛 スミス・カレッジ美術館蔵
    (左から)《潑墨山水図》拙宗等揚筆 / 《山水図》拙宗等揚筆 ともに根津美術館蔵
    (左から)重要文化財《山水図》拙宗等揚筆 龍崗真圭賛 京都国立博物館蔵 / 重要文化財《潑墨山水図》拙宗等揚筆 以参周省・伯充寿棟・春湖清鑑賛 正木美術館蔵
    重要文化財《四季山水図巻》拙宗等揚筆 京都国立博物館蔵
    (左から)《梨花小禽図》伝 銭選筆 / 国宝《鶉図》伝 李安忠筆 ともに根津美術館蔵

    まずは展示室1の「鏡の魔力」から。村上英二氏から寄贈された中国古鏡コレクションから、時代順に優品を紹介する企画です。


    古来、鏡は単なる姿見ではなく、霊力を具えた存在と考えられていました。鏡の背(鏡背)に表わされた文様も、人々の願いが込められています。


    方形と円を組み合わせた文様は「天円地方観」という中国の宇宙観から。古代中国では天は円く、地は四角いと考えられていました。


    時代によって、鏡背にも流行が現れます。後漢時代には人の形で表現されたさまざまな神仙、十二支は隋唐時代には字から動物の姿に、鳳凰が尾を大きく頭上に振り上げて踊る「舞凰形」が流行したのは唐時代です。


    展示室1「鏡の魔力」


    続いて「若き日の雪舟」。若冲の例を出すまでもなく、画家の評価は時代によって上下しますが、雪舟は一貫して高く評価されている「画聖」です。実は、38歳までは拙宗(読みは同じ「せっしゅう」)と名乗っていました。


    展覧会の目玉は《芦葉達磨図》。1928年の売立目録に掲載され、模本と写真では知られていましたが、長い間所在が分からなくなっていました。2008年にスミス・カレッジ美術館に寄贈され、昨年度に京都で修理されたため、母国に戻る前に日本でお披露目となりました。模本と並んで展示されています。


    《潑墨山水図》は、中国画とみなされていた作品。1991年に根津美術館に寄贈された際の調査で、拙宗の作品と判明しました。拙宗と雪舟が同一人物かどうかは議論が続いていますが、岡山県立美術館に当作と構成が良く似た雪舟の作品がある事から、同一人物説を裏付ける重要な作例です。


    拙宗時代の作品は14~15点程度しか確認されておらず、本展では主要な8点を展示。規模は大きくありませんが、画期的な展覧会といえます。


    展示室2「若き日の雪舟」


    いつものようにテーマ展示も開催中。展示室5では、伝李安忠筆の国宝《鶉図》を中心に、中国と日本の花鳥画の小品を特集する「花と鳥の絵画」。展示室6は、鬱陶しい梅雨の季節も、茶道具に取り入れてしまう「雨中の茶の湯」です。


    展示室5「花と鳥の絵画」、展示室6「雨中の茶の湯」


    次の企画展は、夏休みに向けた「はじめての古美術鑑賞」。日本古美術の絵画の技法やその用語を、とくに墨と金の使用法を中心にやさしく解説する企画です。こちらもこの項でご紹介する予定です。


    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2016年5月25日 ]




    ■若き日の雪舟 に関するツイート


    会場
    会期
    2016年5月26日(木)~7月10日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~17:00(入館は16:30まで)
    休館日
    月曜日
    住所
    東京都港区南青山6-5-1
    電話 03-3400-2536
    公式サイト http://www.nezu-muse.or.jp/
    料金
    一般1100円、学生[高校生以上]1000円
    *中学生以下は無料
    展覧会詳細 鏡の魔力 │ 若き日の雪舟 詳細情報
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