コレクションの形成にあたってルーヴル美術館の絵画部長だったルネ・ユイグ氏の助言を受けていた事もあり、西洋絵画には定評がある東京富士美術館。今回は常設展示室と企画展示室の全てを使って、西洋絵画のみを紹介する企画です。
会場に入ると、絵画の密度にびっくり。絵画に包まれるような構成は、まるで海外の美術館のようです。
まず最初の展示室では、16世紀から20世紀までの絵画を1つの展示室で概観する「序章 西洋絵画400年の流れ」から。イタリア・ルネサンスのジョヴァンニ・ベリーニから、ポップアートのアンディ・ウォーホルまでが並び、これだけでも十分に企画展として成立するラインナップです。
序章この後は、時代順の構成。「16世紀絵画 ─ イタリア・ルネサンスと北方ルネサンス」「17世紀絵画 ─ オランダ・フランドルの時代」「フランス バロック・ロココ絵画」「ナポレオン時代の絵画」「新古典主義とロマン主義絵画」と続きます。
全体では序章もあわせて12章構成ですが、途中にサイズや様式、テーマで特集展示も用意。会場前半では「小さな絵画」「ヴェドゥータ(都市景観画)」「巨大肖像画」と紹介されています。
日本人に人気が高い印象派の作品を所蔵している美術館には、印象派以外が“付け足し程度”に留まっている傾向がしばしば見られますが、ここは違います。特に印象派より前の時代の充実度が高いため、館蔵品だけで「西洋絵画の流れを概観する展覧会」をきっちりと見せられるのは、東京富士美術館の強みといえます。
会場前半ここまでで、ようやく半分。続いて、いつもは企画展示に使われる本館へ進みますが、この後にも135点が展示されています。
続いて「イギリス絵画」「アカデミズムとバルビゾン派」「印象派」「印象派以降の画家たち ─ 後期印象派、ナビ派」「エコール・ド・パリの画家たち」「20世紀絵画」という流れ。さらに特集展示の「マン・レイとシュルレアリスムの画家たち」「アメリカン・ポップアート」も含まれます。
実は本展では、初出展の作品が22点も展示されています。これまで出す機会に恵まれなかった西洋絵画ですが、展覧会を担当した宮川謙一学芸員も「展示室に掛ける事で、改めて良さが分かった」という作品も多数。初出展作品は出品リストにマークがついています。
どこもかしこも絵画に溢れる会場ですが、最後の章である「20世紀絵画」は正に圧巻。「多様性を感じてもらいたい」(宮川学芸員)として、多彩な作品で壁面が埋め尽くされています。
会場後半東京・八王子市にある東京富士美術館。都心からはやや離れていますが、圧倒的なボリュームでお腹いっぱいになる事間違いなし。コレクション展という事もあってリーズナブルな観覧料も魅力です(大人800円)。
展覧会にあわせた特別連続講演会として、1月29日(日)は高階秀爾、2月19日(日)は大野芳材、3月19日(日)は島田紀夫の各氏が登壇します(各回とも14時から。入館料のみで参加可能です)。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年1月11日 ]■とことん見せます!富士美の西洋絵画 に関するツイート