展覧会は4階が陶磁、3階がガラス。まずは4階のヨーロッパ陶磁、野依利之コレクションからご紹介しましょう。エレベータを降りた後、いつもとは逆に右方向から会場に入ります。
野依氏は主にアール・ヌーヴォー期のガラス芸術を扱ってきた美術商。本業に留まらず幅広く美術工芸作品も蒐集しており、オランダのデルフトウェアを中心とした陶磁器コレクションが寄贈されました。
17世紀後半から18世紀前半に栄えたデルフトの製陶業。東インド会社が持ち帰った中国磁器の品質に衝撃を受けた当地の陶工は、そのスタイルを模倣した陶磁を生産しました。精巧な東洋磁器のイミテーションとして愛好されました。
いかにも異国趣味に溢れた絵皿や瓶のほか、デルフトウェアの基礎となったマヨリカ、無地のホワイトデルフトなども紹介されています。
「第1部 ヨーロッパ陶磁 野依利之氏」3階は辻清明氏による世界のガラス。陶芸家として活躍した辻氏のもうひとつの顔が、無類の骨董好き。9歳の時に一目で気に入り、誕生日プレゼントとして買ってもらったのが野々村仁清の「色絵雄鶏形香炉」という筋金入りです。
今回寄せられたのは、ガラスのコレクション。古代ローマ、オリエント、中国、ヨーロッパ、さらに和ガラスまで及びます。特に古代のガラスは、これまでのサントリー美術館には少なかった事もあり、貴重な新収蔵となりました。
サントリー美術館では1988年から1998年まで「サントリー美術館大賞」を実施しており、98年には美術家の辻けい氏が参加しました。実は辻けい氏のお父様が、辻清明氏。美術館の長い活動から、素晴らしい縁が生まれました。コーナーの最後には、辻清明氏の手によるガラス作品も紹介されています。
「第2部 世界のガラス 辻清明氏」本展は来館者でも撮影が可能で、しかも全作品OK。最近は一部の撮影が許される展覧会は増えてきましたが、「全て撮影可」はかなり異例。サントリー美術館としても初の試みです。お気に入りの1枚を、ぜひSNSで発信してください(フラッシュ、追加照明、三脚、一脚、自撮り棒は不可)。
吹き抜けスペースでは「サントリー美術館 六本木での10年」と題し、10年間の歩みを紹介するコーナーも設置。今まで開催された55本の展覧会の全ポスターも紹介されています。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年1月24日 ]■コレクターの眼 ヨーロッパ陶磁と世界のガラス に関するツイート