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    レポート
    ファッションとアート 麗しき東西交流
    横浜美術館 | 神奈川県
    「国策」だった洋装化
    幕末の1859(安政6)年に開港し、西洋への玄関口となった横浜。外国との交流が進む中で、日本では西洋の文化が広まり、逆に西洋ではジャポニスムの流れで日本文化が流行するなど、それぞれが影響を受けあいました。19世紀後半から20世紀前半のファッションと美術に焦点を当てて、東西の文化交流を紹介する展覧会が、横浜美術館で開催中です。
    (手前)日本製《昭憲皇太后着用大礼服(マントー・ド・クール)》1910年頃 共立女子大学博物館蔵 / (奥左から)グイード・モリナーリ(イタリア)《明治天皇肖像》1897年 / グイード・モリナーリ(イタリア)《昭憲皇太后肖像》1897年 2点とも東京都庭園美術館蔵
    (手前左から)椎野正兵衛商店《輸出用室内着》1875年頃 / 日本製《輸出用紳士室内上着》19世紀後半 / 椎野正兵衛商店《輸出用室内着》1875年頃 3点とも京都服飾文化研究財団蔵 / (後ろ)日本製《芝山細工花鳥図屏風》明治時代 金子コレクション
    (左から)日本製《輸出用ティー・ガウン》[リバティ商会取扱い(推定)] 1895年頃 京都服飾文化研究財団蔵 / 日本製《チェス・テーブル》明治時代 金子コレクション / 日本製《輸出用ティー・ガウン》1895年頃 京都服飾文化研究財団蔵
    (左から)飯田髙島屋《輸出用イヴニング・コート》1903年 / 日本製《輸出用イヴニング・コート》1903年 ともに京都服飾文化研究財団蔵
    (左から)清水市郎《東京廓之美人》1889年 横浜美術館蔵(小島豊氏寄贈[小島鳥水旧蔵]) / 勝山繁太郎・矢島徳三郎《都之花》1889年 日本宝飾クラフト学院蔵
    (左から)山本耕花《少女》1935年 横浜美術館蔵 / 勝田哲《朝》1933年 京都市美術館蔵
    第3章「西洋 ジャポニスムの流行」 右は、ジュール=ジョゼフ・ルフェーヴル《ジャポネーズ(扇のことば)》1882年 クライスラー美術館蔵(Gift of Walter P. Chrysler. Jr.)
    第3章「西洋 ジャポニスムの流行」
    (左から)マドレーヌ・ヴィオネ(フランス)《イヴニング・ドレス「アンリエット」》1923年頃 京都服飾文化研究財団蔵 / フランス製(推定)《ドレス》1925年頃 京都服飾文化研究財団蔵
    展示の中心は女性ファッション。世界的に評価が高い京都服飾文化研究財団(KCI)が所蔵するドレスを、約20年ぶりにまとまったかたちで紹介していきます。

    展覧会は3章構成、1章は横浜についてです。

    以前は小さな漁村だった横浜。開港は外圧に屈したものですが、結果として横浜を国際都市に引き上げる事となりました。

    外国との交流が増える中で、横浜では輸出向けの産業が発展します。上質の絹織物、真葛焼や横浜焼などの陶磁器、精緻な芝山細工などが海外で高い人気を集め、横浜から続々と輸出されていきました。


    第1章「東西文化の交差点 YOKOHAMA」

    第2章は「日本 洋装の受容と広がり」。《昭憲皇太后着用大礼服》はここで登場します。

    ドレスは、昭憲皇太后(明治天皇の皇后)が新年の朝賀の際に着用した大礼服。3メートルを超えるトレーンには、大小の菊花が日本刺繍であしらわれています。

    近代日本の洋装化は、国策として進められました。新政府のリーダーは渡欧時の経験などから、文明国として認められる第一歩は「洋服を着る事」だと知っていたのです。

    軍や官吏・学生などで洋服の導入が早かった男性に対し、女性は遅れ気味。危機感を持った伊藤博文が宮中での洋服着用を推進し、「上からの改革」として洋装化が進みました。


    《昭憲皇太后着用大礼服》

    庶民レベルまで女性の洋装化が進んだのは意外と遅く、1923(大正12)年の関東大震災の後から。和服のままネックレスや指輪をつけるなど、和様折衷の装いも多く見られました。

    新しい女性の姿は、芸術家たちも刺激しました。江戸時代の花魁がそうだったように、ファッションリーダーの女性は浮世絵の定番モチーフです。上流階級の洋装の女性は、楊洲周延や月岡芳年らが錦絵にしています。

    岡田三郎助、山本芳翠、山本耕花、鏑木清方らの洋画家や日本画家も、洋装の女性を描いています。


    第2章「日本 洋装の受容と広がり」

    一方で、西洋にとっても長い間閉ざされていた日本の文化は、大きなインパクトを与えました。「ジャポニスム」ブームの到来です。

    テーブルウェアや調度品に日本風のテイストが取り入れられたように、ファッションの分野でもジャポニスムは大きな影響を与えました。ウォルトやシャネルなど、名だたるメゾンがこぞってきものから着想したドレスを作っています。

    もちろん、絵画にもジャポニスムの影響が及んだのはご存じの通り。会場には日本風のファッションに身を包んだ女性像も展示されています。


    第3章「西洋 ジャポニスムの流行」

    「国策でファッションを決める」のは、現代の感覚では理解できませんが、明治の末に、非白人国として唯一、列強の仲間入りを果たしたのは日本です。躍進の裏でファッションが果たした役割は、小さくなかったのかもしれません。

    横浜美術館でファッションを中心とした展覧会が開催されるのは、本展がはじめてです。華やかな会場をお楽しみください。

    [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年4月14日 ]



    ■ファッションとアート 麗しき東西交流 に関するツイート


     
    会場
    会期
    2017年4月15日(土)~6月25日(日)
    会期終了
    開館時間
    10:00~18:00
    (入館は閉館の30分前まで)
    休館日
    木曜日、5月8日(月)*5月4日(木・祝)は開館
    住所
    神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
    電話 045-221-0300
    公式サイト http://yokohama.art.museum/special/2017/fashionandart/
    料金
    一般 1,500円(前売1,300円 / 団体1,400円)
    大学・高校生 900円(前売 700円 / 団体 800円)
    中学生 600円(前売 400円 / 団体 500円)
    小学生以下 無料
    65歳以上 1,400円(要証明書、美術館券売所でのみ対応)
    展覧会詳細 ファッションとアート 麗しき東西交流 詳細情報
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