展覧会は今夏、宮城県美術館で行われた「ルオーのまなざし 表現への情熱」展の巡回展。パナソニック 汐留ミュージアムのルオー・コレクションと、宮城県美術館蔵のカンディンスキーやクレーの作品に加え、他館からの貴重なドイツ表現主義作品も紹介しつつ、天才画家の歩みを展観していきます。
第1章は「カンディンスキーとルオーの交差点」。カンディンスキーによる《商人たちの到着》は展覧会のメインビジュアル。油彩ではなくテンペラ画で、故郷・ロシアへの憧憬が込められています。ルオーも出品していた1905年のサロン・ドートンヌで展示されました。
第1章「カンディンスキーとルオーの交差点」第2章は「色の冒険者たちの共鳴」。パリで生まれたフォーヴィスムの一員と見なされていたルオー(ただ、自身は特定の画派への定義付けを嫌っていました)。同じ1905年にドイツで結成された芸術グループが「ブリュッケ」です。自然への回帰を志向し、原始的な風景やヌードなどをモチーフにしました。
ブリュッケと並びドイツ表現主義を代表する存在が、カンディンスキーを中心としたグループ「青騎士」。作家の内面に重きを置いたため、カンディンスキーは後に現実世界の描写から離れ、純粋な色彩だけの構成に向かいます。
ここにはクレーの作品も展示されています。クレーとカンディンスキーは、ともに1900年にミュンヘンの王立アカデミーに入学。互いに良き理解者でした。
第2章「色の冒険者たちの共鳴」第3章は「カンディンスキー、クレー、ルオー ─ それぞれの飛翔」。第一次世界大戦の勃発によりドイツ表現主義は終了しますが、戦後になると画家たちはそれぞれの道を歩みました。
カンディンスキーはバウハウスのマイスターに就任。教育の傍ら制作活動を進め、幾何学的なモチーフの抽象画に到達します。
クレーもバウハウスのマイスターとなり、カンディンスキーの同僚に。具象とも抽象ともいえない、独自の詩的な作品世界を突き詰めていきます。
一方、ルオーは一貫して具象を追及。幾層にも絵具を乗り重ねた深淵な宗教画に至りました。
第3章は「カンディンスキー、クレー、ルオー ─ それぞれの飛翔」残念ながらこちらのページではルオーの作品がありませんが(著作権存続作家のため)、本展で一番多いのはルオー。初期から最晩年まで、数々の作品が並びます。会場でお楽しみください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2017年10月16日 ]■パナソニック 表現への情熱 に関するツイート