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ターナー 風景の詩(うた)
■イギリスの国民的画家、120点が一堂に
【会期終了】 イギリスを代表する画家、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775~1851)。巧みな技術で空気まで描くような風景画は、後の芸術家にも多大な影響を与えました。約120点の作品で、あらためてターナーの魅力に迫る展覧会が、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中です。
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(左から)《20ヴィニェットのうちの1点―キャンプ・ヒルにて、ヘイスティングス近く》1835年頃 エディンバラ、スコットランド国立美術館群 / 《20ヴィニェットのうちの1点―バルト海の戦い》1835年頃 エディンバラ、スコットランド国立美術館群
(左から)《オステンデ沖の汽船》1840-41年頃 ポート・サンライト、リヴァプール国立美術館群、レディ・リーヴァー・アート・ギャラリー / 《マーゲイトの浜辺の眺め》マンチェスター大学、ウィットワース
(左から)《ローマ 左岸にアヴェンティーノの丘のあるテヴェレ川》1794-97年 エディンバラ、スコットランド国立美術館群 / 《ヴェスヴィオ山とサン・サルヴァトーレ修道院》1794-97年 エディンバラ、スコットランド国立美術館群
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2020年から英国で使われる新20ポンド紙幣に、チャップリンなどを抑えて採用される事が決まったターナー。まさに国民的な画家といえる存在です。夏目漱石の小説にしばしばその名が登場するなど、日本でも古くから親しまれています。
展覧会はジャンル別の4章構成で、第1章「地誌的風景画」から。地誌的風景画とは、場所が特定できるような、特徴的な地形を描いた風景画の事。測量技術の進歩にともない、18世紀の英国で流行し、ターナーも英国中を旅して描いています。 第2章は「海景 ─ 海洋国家に生きて」。七つの海を支配した海洋国家・英国。人々は海に親しむと同時に、海に対して尊敬の念も持っていました。ターナーの海景画には帆船と蒸気船が登場しますが、ちょうど両方の輸送形態が混在していた時代です。 第1章「地誌的風景画」、第2章「海景 ─ 海洋国家に生きて」 第3章は「イタリア ─ 古代への憧れ」。ターナーは1819年から1820年にかけてローマを訪問。古代遺跡をはじめ重厚な建築が数多く残る風景は、ターナーを魅了しました。現地でスケッチを描き、帰国後に水彩画にしています。 第4章「山岳 ─ あらたな景観美をさがして」。現在の感覚ではやや意外に思えますが、絵画の対象として「山」が意識されるのは、ずいぶんあと。ターナーが属するロマン主義以前には、ほとんど描かれませんでした。ターナーが山を積極的に描くようになったのは、1830年代からです。 第3章「イタリア ─ 古代への憧れ」、第4章「山岳 ─ あらたな景観美をさがして」 図録では5章で紹介されている版画作品は、会場の各所で展示されています。800点以上の銅版画を残したターナー。ターナーの指導は厳しく、彫版師としばしば口論になるほどでしたが、その成果もあって、極めて質の高い版画作品が残されています。 展覧会は北九州から始まり、東京展が3館目。最後に郡山市立美術館に巡回します(7/7~9/9)。 [ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2018年5月8日 ]
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